2023年4月、一部の業界を除き中小企業においても働き方改革関連法が施行されました。労働者の希望に沿った多様な働き方を実現することを目的に、複数の法律が改正されています。特に長時間労働の是正、適切な年次有給休暇の取得が企業の責任として義務付けられています。

その一方、少子高齢化による労働人口の減少により、日本企業は人材不足に喘いでいます。特に中小企業ではIT関連スキルを必要とする情報システム部門において新たな人材を確保できず、仕方なく特定の従業員に大きな負担がかかっているケースが目立ちます。つまり、情報システム部門だけが、働き方改革から置き去りなることがあるということです。

情報システム部門の役割とは

情報システム部門が果たすべき役割は、企業によって大きく異なりますが、一般的には「企業全体のIT戦略を策定する」「インフラの整備」「社内システムの運用保守」「社内ヘルプデスク」などが挙げられます。これだけ見てもわかる通り、ITに関連する多様な業務が情報システム部門に集中しています。

ところが、人材不足や人件費を確保できないといった理由から、企業のビジネスを支えるITインフラを支える部門であるにも関わらず、「ワンオペ情シス」と呼ばれる労働環境が生まれてしまうことがあります。企業によっては、ワンオペ情シスを担当している従業員が専任ではなく、別の仕事をしているというケースもあり、特定の人だけが突出して長時間労働を強いられていることもあります。

こうした事態を避けるために必要なことは、「ITの責任を情報システム部門にだけ押し付けない」ことにあります。

セキュリティの視点でもワンオペ情シスは危険

企業のITインフラと切り離すことのできないこととして挙げられるのは、セキュリティ対策です。特にランサムウェアなど企業に直接莫大な被害を及ぼすサイバー攻撃も多く、ITを管理する情報システム部門にとっても大きな負担となっています。

サイバー攻撃への対応は初動が非常に大切です。被害を最小限に抑えるため、セキュリティソリューションによって何らかの異常を検知した場合、担当者は迅速に状況を確認する必要があるということです。高度なセキュリティソリューションは攻撃に自動で対応することもありますが、運用コストもそれなりにかかります。もちろん、すべての攻撃に適切に対処できる保証はありませんので、検知した異常事態は担当者に通知することが通常の運用です。

ところが、サイバー攻撃の多くは、深夜、週末、年末年始などの長い休日など「人が少ない」タイミングを狙っています。実際にセキュリティ侵害が発生した場合、対応できる担当者が1名しかいないとしたらどうなるでしょうか。深夜に担当者が自分のスマホに届いた通知に気付かなかったことで、ランサムウェアによる攻撃を受け、重要なデータが削除されてしまうかもしれません。果たしてこれは情報システム部門の担当者の責任だと言えるでしょうか。

＼無料ダウンロード資料／
1万人アンケート調査で分かる情報セキュリティの今

あるいは、退職した従業員のアカウントがいつまでも残っており、そのアカウントを利用した不正侵入によって情報漏洩が発生するというケースはどうでしょうか。ワンオペやそれに近い業務環境の担当者は、他の業務に追われて「退職者のアカウント整理は後でまとめてやろう」と考えるかもしれません。その結果、放置されたアカウントを不正利用された場合、業務に追われる担当者を責めるだけでこの問題は解決するでしょうか。

いずれの場合も、担当者に責任がないとは言えません。しかし、こうした事態を放置していた企業そのものにこそ責任があることは間違いありません。情報システム部門だけの問題ではないのです。

情報システム部門のあり方をもう一度考え直す

情報システム部門にとって最も重要な業務は、企業のビジネスを支えるIT戦略を策定することにあります。もちろん、他も重要な業務ではありますが、高いスキルを持った人材を確保できないのであれば、専門業者にアウトソースする方が前向きです。たとえばセキュリティ対策を含む社内システムの運用保守を24時間365日、高いスキルを持った専門家のいる業者に任せることができれば、重大なセキュリティ被害を避けることができるでしょう。

社内ヘルプデスクも社内システムの運用保守のようにアウトソースできますが、なるべくコストを抑えたいのであれば、社内wikiやチャットボットの利用も前向きに検討すべきでしょう。つまり従業員一人一人に「自分の問題はなるべく自分で解決する」という意識を持ってもらうということです。なお、社内ヘルプデスクで非常に多い問い合わせは「パスワード忘れ」だそうですが、パスワードを忘れてしまった場合に自動で対応する仕組みを用意しておくことも可能です。クラウドサービスを利用している場合には、サービス提供者がパスワード変更などの機能を提供していることもありますので、困ったときに見る社内wikiなどにやり方を記載しておくこともできます。

社内アカウントやライセンスの管理も、情報システム部門にとって大きな業務負担だと言われています。しかし、最近ではこれらの業務を総務部門や人事部門に任せる企業も増えています。たとえばソフトウェアライセンスは社内の資産管理と一緒に総務部門が管理する、社員のアカウントは従業員が入社した際に必要書類を用意するということです。もちろん、退社する際にはやはり人事部門が責任を持ってアカウントを削除しますし、従業員の退社にともなうソフトウェアライセンスの削除は総務部門が請け負うといった形です。

健全な労働環境がなければ質の高い情報システム部門は実現しない

これまでITに関連することはすべての情報システム部門に丸投げしていた企業は少なくありません。しかし、DXを推進してビジネスの変化に柔軟に対応できるIT戦略を策定できる企業になるには、情報システム部門が本来の仕事に専念できる環境が重要です。

働き方改革によって、これからも企業は労働者の多様な働き方を実現しなければなりません。そのためにITが果たすべき役割は非常に大きく、情報システム部門はその仕組みを支えています。情報システム部門自身が健全で多様な労働環境を理解し、その恩恵を受けていなければ、質の高い仕組みを支えることはできません。

アウトソーシングサービスを積極的に活用することはもちろんですが、社員の意識を変革して自分で解決する能力を高める、あるいはそのための情報を収集できる仕組みを提供することが大切です。また、情報システム部門よりも他の部門に担当させた方が効率の良い業務もあるかもしれません。まずは情報システム部門の現状を把握し、担当している業務を洗い出し、できることから積極的に解決する姿勢を持つべきでしょう。

まとめ

中小企業の情報システム部門は人材不足などにより長時間労働を強いられることがあ
セキュリティ面でもワンオペ情シスは危険である
情シスのアウトソーシングサービス利用も検討する

情報システム部門の役割とは

セキュリティの視点でもワンオペ情シスは危険

＼無料ダウンロード資料／1万人アンケート調査で分かる情報セキュリティの今

情報システム部門のあり方をもう一度考え直す

健全な労働環境がなければ質の高い情報システム部門は実現しない

まとめ

＼無料ダウンロード資料／
1万人アンケート調査で分かる情報セキュリティの今