メールは企業活動にとって不可欠なツールです。一般企業にメールが浸透してから既に30年程の時間が経過しており、あることが当たり前のITインフラとなっています。

そのため、多くの企業で「古いメールシステムの管理が大変」「メールシステムを構築したのは何年も前で、社内にメンテナンスできる人がいない」といった声もよく聞かれています。

近年、このような企業のレガシーシステムは、少しずつクラウドへと移行しています。とりわけビジネスにとって不可欠なビジネスツールであるメールシステムは、信頼性の高いMicrosoft 365 ファミリーである Exchange Onlineへの移行がおすすめです。

そこで今回は企業のメールシステムをExchange Onlineに移行するメリットや、移行する際の注意点などを解説します。

無料ダウンロード！Exchange Online入門！メールサーバーのクラウド化への道！

ダウンロードはこちら

Exchange Onlineのメリット

メールシステムをクラウドに移行することで、運用保守のコストを大幅に削減、クラウドサービスベンダーによる高いセキュリティ性能の実現などさまざまなメリットがあります。もちろんExchange Online 以外にもメールシステムのクラウドサービスはいろいろありますが、その中からExchange Onlineを選択する企業が多いのには理由があります。

メリット：メールボックスが50GB

ビジネスメールは、あっという間にどんどん溜まっていきます。メールボックスがいっぱいになると、新しくメールの送受信ができなくなってしまいます。しかし、Exchange Onlineは、ユーザーごとに50GBの大容量のメールボックスが用意されています。

メリット：共有メールボックスが利用できる

Exchange Onlineの共有メールボックスは、「info@」や「support＠」などチームや部署のメールボックスを複数人で共有できる機能です。権限があるユーザーだけがメールの閲覧や送受信を実行できます。

メリット：高いセキュリティ性能

Microsoft 365のファミリーであるExchange Onlineは、世界的レベルで高度なセキュリティ性能を誇っています。ウイルスやスパム対策はもちろん、なりすましメールを防止する「DMARC (*1)」による安全なメールの認証を実施しています。また、組織内のセキュリティグループ設定なども可能です。

*1 DMARC
DMARC (Domain-based Message Authentication, Reporting & Conformance) は、メールのドメイン認証技術のひとつ。メール認証プロトコルSPF (Sender Policy Framework) と DKIM (DomainKeys Identified Mail) を組み合わせ、実在する組織になりすました不正なメール受信を防ぎます。

メリット：他のMicrosoft 365製品との相性が良い

当然ですが、Outlook、Teams、SharePointなど他のMicrosoft 365のファミリーの製品との相性は抜群で、予定表の共有、カレンダーの共有、会議や会議室の予約、ファイルの共有などを利用する企業が増えています。

デメリット：利用にはMicrosoft 365のアカウントが必要

Exchange Onlineを利用するには、Microsoft 365アカウントが必要です。既にMicrosoft 365を利用している企業であれば大きなコストをかけることなくメールシステムの移行が可能ですが、そうではない企業にとってはライセンス費用の負担が課題になるかもしれません。しかし、ビジネスアプリケーションをMicrosoft 365に乗り換える機会として捉えれば、長い目で見ると運用コストやライセンスコストの大きな削減になる可能性もあります。

デメリット：アップデートによって仕様変更が発生する場合がある

メールシステムをコントロールしているのはMicrosoft なので、突然仕様が変更されてしまう可能性は否定できません。特にセキュリティ性能を向上させるため、メールのフィルタリングルールが変更になったり、認証方式などが厳しくなったりする可能性が考えられます。

既存のメールは移行可能だが、メールの受信方式によって移行方法が異なる

一般的なメールシステムは、メールを送信する「SMTP (Simple Mail Transfer Protocol) サーバー」と、メールを受信する「POP (Post Office Protocol) サーバー」または「IMAP (Internet Message Access Protocol) サーバー」によって構成されています。(*1)

POPサーバーとIMAPサーバーの違いを簡単に説明すると、POPはメールをサーバーからローカルのデバイスにダウンロードしますが、IMAPはサーバーに保存されているメールをローカルのデバイスにキャッシュする（コピーを保存する）という方式です。スマートフォンなどのモバイルデバイスの場合、デバイス内のストレージ圧迫を避けるためにIMAPを利用するケースが多いようです。

Exchange OnlineはPOP3とIMAP4のいずれにも対応していますが、既存のサーバーからメールを移行する方法が異なることに注意が必要です。

*1
現在一般的に使用されているPOPサーバーのプロトコルは「Post Office Protocol version 3」であるため、POP3サーバーと呼ばれることもあります。同様にIMAPも「Internet Message Access Protocol 4」であるためIMAP4と呼ばれることがあります。

利用しているDNSサービスによってはExchange Onlineに対応していないことがある

Exchange Onlineを利用する際、DNSの設定を変更する必要があります。より正確には「TXTレコード」「CNAMEレコード」「MXレコード」の設定を変更しなければなりません。しかし、DNSの運用を委託している場合には、これらの設定変更が可能かを確認する必要があります。

また、自社で運用している場合であっても、これらのレコードの設定が変更できることを確認してください。設定変更ができない場合には、利用しているDNSサービスを見直す必要があります。

ユーザー以外のメールアドレスにもMicrosoft 365のアカウントが必要

ビジネスで使用しているシステムやアプリケーションがメールの送受信機能を持っている場合、Exchange Onlineでメールを送受信するのであれば別途Microsoft 365のライセンスを用意しなければなりません。最近ではプリンタやコピーの複合機にもメール機能を持った製品が多くあります。

また、Exchange Onlineの仕様上、TLSでのSMTP送信、OAuthを使用した認証に対応している必要があります。事前にメーカーに確認してください。

自社のドメインを名乗って外部からメールを送信している場合

メールマガジンの配信など、自社のドメインを利用して外部システムからメールを送信している場合、なりすましメールとして処理されて届かなくなることがあります。こうした事態を防止するには、SPFレコードに追記し、Microsoft 365 のスパム除外リスト(ホワイトリスト)に送信元グローバルアドレスを登録する必要があります。

既存のメーリングリストは見直す必要がある

ビジネスでメーリングリストを利用している企業も多いと思いますが、Exchange Onlineに移行する際にはメーリングリストも棚卸が必要です。

Exchange Onlineには、メーリングリストによく似た機能として事前に登録した組織内のユーザーを登録しておく「配布リスト」が用意されています。配布リスト用のアドレスに対してメールを送信すると、登録されているユーザーに一斉にメールが送られます。ただし、配布リストを送信元としてメールを送信することはできません。既存のメーリングリストをそのまま移行することはできないため、同様の機能を実現するためには新たに配布リストを作成しなおす必要があります。

そのため、多くの企業ではメーリングリストの棚卸を実施し、本当に必要なメーリングリストだけを配布リストとして新たに設定するケースが多いようです。

また、他にも共有メールボックスという機能がありますが、これは複数人で同じメールボックスを共有する機能です。そのため、メンバーの誰かがメールを読めば、そのメールは他のメンバーにとっても既読のメール扱いになります。なお、共有メールボックスは送信元のアドレスとしても利用可能です。

Microsoft 365のお悩みを解決！Microsoft 365-BPOサービス

詳細はこちら：https://hypervoice.jp/m365shien

まとめ

・メールシステムはセキュリティ性能の高いExchange Onlineへの移行がおすすめ
・Exchange Onlineを利用するにはMicrosoft 365のライセンスが必要
・Exchange Onlineへの移行にはDNS設定などに注意が必要