GPU（Graphics Processing Unit）はグラフィック画像処理に特化したプロセッサーというイメージが強いのですが、今ではAI開発やディープラーニングにも欠かせないものとなっています。GPUとはどんな働きをするものなのか復習するとともに、どんなGPUが選ばれているのかをチェックしてみましょう。

GPUについて簡単におさらい

GPU（Graphics Processing Unit）はその名の通り、3Dグラフィックスなど画像描写を行うプロセッサーです。画像を処理するためには、大量のデータを速く処理できる仕組みが必要です。複数のタスクを並行して処理できるGPUはその役割を担うのに最適なのです。

CPU（Central Processing Unit）もGPUも、PCやサーバーが動作するために計算処理を行うという点では同じです。CPUは日本語で中央処理（演算）装置と呼びますが、いわばコンピューターの頭脳として機能しています。個別にタスクを処理し、連続的な計算処理を得意とします。

一方、GPUは内部でコアが連携して動作するため、並列的な計算処理、つまりマルチタスクを得意とします。行列演算の処理スピードはCPUの数倍～100倍以上ともいわれている反面、CPUのように幅広い処理には向きません。

GPUの高い演算能力は、十数年前からグラフィックス以外にも利用されるようになりました。画像処理以外に用いられるGPUは、GPGPU（General-purpose computing on graphics processing units＝汎用GPU）とも呼ばれています。

AIやディープラーニングにGPUが向いている理由

AIはさまざまな分野で活用されています。AIの技術として、マシンラーニング（機械学習）、ディープラーニング（深層学習）、自然処理言語（NLP）、画像認識などが挙げられます。

マシンラーニングはデータをAIに学習させてデータのパターンを発見するもの。ディープラーニングは、マシンラーニングよりも大きい、ビッグデータなどを扱い、高い精度で問題を解決する技術です。

自然言語処理は、人間が使う言葉（自然言語）をコンピューターで処理する技術。画像認識は、ディープラーニングで写真や映像の特徴を学習し、そこに写っているものが何であるのかを識別するものです。

いずれにも共通するのは、大量のデータを学習し、高速処理する能力。画像でも文章でも、コンピューターの中では数字に置き換えて計算するので、何百万、何千万の計算を繰り返すことになります。

CPUの計算能力では、処理に相当な時間がかかってしまうため、処理速度に優れたGPUがその計算を担うようになってきたのです。

注目されているGPUは？

GPGPUに早期から取り組んできたNVIDIAが、現在AI用途のGPUでもシェアを広げています。

同社は、2006年からGPUを科学分野の計算用途に広げたCUDA（Compute Unified Device Architecture）を公開しています。これは、GPUを利用し、並列計算を行うためのソフトウェア開発・実行環境の1つで、NVIDIA製GPU向けに開発・提供したものです。

NVIDIAはさらに、マシンラーニング向けGPU「Tesla M40」を2015年に、AI処理向けGPU「NVIDIA H100」を2022年に出荷しました。

NVIDIAは一般向けのGPUも多く展開しており、NVIDIAのGPUが採用された機種を使っている企業も多いのではないでしょうか。

AI向けのGPUの特徴として選ぶ場合はTensorコアの有無が選択の決め手となります。このTensorコアは、ディープラーニングに特化した演算回路で、NVIDIAが開発したものです。1回のクロック（デジタル回路の同期をとるための周期的信号）で複数の演算を並行して実行でき、それによって高速化するのです。

PCでAIを扱う場合は、NVIDIA RTX、GeForce RTXの「特大規模モデル」となっているハイエンドのものを選ぶといいでしょう。VRAMが16GB以上はほしいところです。

AIサーバー用GPUでは、NVIDIA H100 Tensor Core GPUが2023年12月現在では最高峰の性能を誇ります。

NVIDIAに続くGPUメーカーがAMDです。NVIDIAと同性能のGPUであればAMD製のほうが安価で、コストパフォーマンスに優れていると評価をされています。

PC用のGPUでは、ハイパフォーマンスモデルとしてAMD Radeon RX 7000 シリーズがあります。高度なAI処理速度を速めるように設計され、前世代に比べて2倍以上強力なパフォーマンスを実施。最大48GBのVRAMもそなえています。

サーバー用としては、2023年12月には、AMDの「Instinct MI300」が生成AIでNVIDIA H100を上回る性能を発揮すると発表されました。

ただ、2024年にはNVIDIA H200が出ることが発表されており、こちらはNVIDIA H100と比べて推論速度が2倍とされていますので、NVIDIAの牙城は崩されないのかもしれません。

まとめ

・GPUはマルチタスクを高速で処理することができる
・AI処理には大量のデータを用いるのでCPUよりGPU
・GPGPUの二大メーカーはNVIDIAとAMD