「RASIS」とは、Reliability（信頼性）、Availability（可用性）、Serviceability（保守性）、Integrity（保全性）、Security（安全性）の頭文字をとった用語で、システムの信頼性を評価する概念です。簡単に言ってしまえば、コンピュータシステムが期待される機能や性能を有しているかどうかを判断する5つの観点です。

RASISの考え方は新しいものではありません。1970年代にIBMがメインフレームの信頼性を表す用語として「RAS（Reliability, Availability and Serviceability）」を提唱し、他のベンダーでもRASの観点からシステムを評価するようになりました。後に、日本においてIntegrityとSecurityが加えられてRASISになったわけですが、50年も前からコンピュータシステムの信頼性を評価することをとても重視していたということがよくわかります。

RASISを構成する要素

RASISを構成する5つの構成要素には、次のような意味があります。

これらの構成要素は独立しているわけではなく、それぞれが密接にかかわりあっています。たとえば、可用性の高い仕組みであるためには信頼性が不可欠ですし、障害発生したとしても保守性運用性が高ければ稼働率を高めることも可能です。もちろんデータを完全に保全するには、セキュリティ性能はもちろん、システムの信頼性が必要になります。

Reliability（信頼性）

ハードウェアおよびソフトウェアの故障や障害などによるシステムの停止がなく、安定した稼働を継続できるかどうかなどシステムの故障しにくさを表します。具体的な指標としては、稼働時間当たりの障害発生回数をMTBF(Mean Time Between Failures：平均故障間隔)で示します。MTBFの値が大きいほど信頼性が高くなります。

Availability（可用性）

システムが正常に稼働している時間の長さや停止時間の短さを表します。一般的に稼働が期待される時間に対する実際の割合を稼働率として示します。

Serviceability（保守性・運用性）

障害復旧の早さや、メンテナンスのしやすさを表します。システムを修復するのにかかる平均時間であるMTTR（Mean Time To Repair：平均修理時間）などで示されることも多く、MTTRが小さいほど障害復旧までの時間が短いという意味になります。ただし、MTTRは故障などでシステムが停止している時間（ダウンタイム）から算出されるため、障害の予兆検知などその他のメンテナンス性能については考慮されてません。

Integrity（保全性・完全性）

障害や誤動作によるデータの破壊や喪失、不整合などの起こりにくさを表します。正しくデータを保持し、常にデータが一貫していることを評価します。

Security（安全性・気密性)

システムのセキュリティ性能を表します。昨今のサイバー攻撃は巧妙化・多様化する一方であることから、「この仕組みを入れておけば安全だ」と言い切れるソリューションはありません。最新のセキュリティ情報をチェックし、常に見直しをすることが大切です。

なお、情報セキュリティの３大原則に「CIA」という概念もあります。RASISと似ていますが、これはそれぞれ「Confidentiality（機密性）」「Integrity（完全性）」「Availability（可用性）」を表しています。

まとめ

・RASISはITシステムの信頼性を評価する概念
・かつてはIBMが提唱したRASという概念だったが、のちにISが追加された
・それぞれの要素は独立しているわけではなく、密接にかかわって信頼性を高めている