リモートワーク（テレワーク）が働き方の一つとして定着して数年が経過しました。しかし、いまだに従業員の就労状況をどのように把握すべきなのかについて模索しているという声をよく耳にします。多くの企業は新型コロナウィルス感染症の予防対策として、万全な準備も整わないまま見切りでリモートワークを開始しており、この数年でさまざまな課題に否応なしに直面してきました。

そこで今回は、リモートワークを含む多様な働き方を実施している企業の業務管理について、業務効率を向上させるという観点から考察してみたいと思います。今こそ、改めて自社に最適な従業員の働き方や業務管理について、検討してみてはいかがでしょうか。

リモートワークにおける業務管理

「業務管理」という言葉の示す範囲は立場によって異なります。人事部門や総務部門の立場では勤怠管理、業務部門ではプロジェクト管理やタスク管理などをイメージするかもしれません。

これらの仕組みはリモートワーク、オフィスワークのいずれでも欠かせませんが、従業員が物理的にオフィスに出社しないため、勤怠管理に紙のタイムカードを利用することはできません。また、プロジェクト管理ツールやタスク管理ツールも、リモートワークに対応した仕組みを利用することが必須です。

特に管理する側と管理される側の両方にとって負担となっているのが、リモートワーク時の就労状況の把握です。オフィスで仕事をするわけではないリモートワークでは、従業員が働いている姿を他の人が見ることはありません。そのため業務を管理する立場からは「部下がサボっているように見える」こともあります。

しかし、それ以上に問題なのは、管理される側の従業員が「サボっているように見られているのではないか」という心理的負担を抱えてしまうことがあるということです。中には上司から進捗状況を尋ねられただけで、不安を感じてしまうケースもあります。こうした心理状態に追い込まれ、無理な長時間労働を繰り返してしまう、あるいは必要性の乏しい報告書やプレゼンテーション資料など過剰な成果物を作成してしまうといったことが問題になることもあります。これはメンタルヘルスの視点でも大きな課題と言えるでしょう。つまり管理する側と管理される側の双方にとって、業務状況を可視化するなんらかの仕組みが求められているのです。

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リモートワークに必須の仕組みとは

リモートワークにおいて絶対に導入すべき仕組みは、チャットやオンライン会議ができるコミュニケーションプラットフォームです。他の従業員に質問する、意見を述べる、議論する、あるいはもっと気軽な雑談などオフィスで働いている時には当たり前だったコミュニケーションは、リモートワークになった途端に敷居が高くなってしまいます。こうしたコミュニケーション不足は、業務効率の低下はもちろん、リモートワークに従事する従業員の孤独感にもつながります。こうした課題を解決するのがコミュニケーションプラットフォームです。企業によってはアバターが仮想空間にあるオフィスに出社するバーチャルオフィスを展開していることもあれば、社内SNSのようなポータルを提供していることもあります。

業務管理という側面からコミュニケーションプラットフォームを見ると、誰が何をしているのかを気軽に質問しやすく、上司が部下に対して指示を出しやすいというメリットがあります。オープンなチャンネルでの会話であればチーム内に情報共有が可能であり、センシティブな内容であれば個別のチャットやオンライン会議で会話するといった使い分けも可能です。管理される側の従業員も、コミュニケーションツールにログインしていることで、自分が業務中であることを上司や同僚に示す効果もあります。

コミュニケーションプラットフォームと併せて検討したいのは、課題管理やタスク管理の仕組みです。業務内容によってはプロジェクト管理の仕組みでも良いかもしれません。いずれにしても、「誰が」「いつまでに」「どの課題（あるいはタスク）を」「解決するのか」を管理することで、従業員の業務実態を把握しつつ、業務効率を向上させることができます。さらに、特定の人にばかり業務負担が集中することを防止する効果もあり、他のチームメンバーに助けを求めやすくなります。

もちろん勤怠管理も従業員の就業時間を可視化する重要な仕組みです。リモートワークでも打刻可能な勤怠管理システムを導入する企業も増えており、給与計算の仕組みと連携させることでバックオフィス業務の効率化を図っています。規模の小さな企業において、チャットツールで就業の開始や終了を宣言することで代替しているケースも見受けられますが、これは終業時間を管理する立場からは大きな負担となります。長時間労働の是正、適切な休暇の取得推進といった観点からも、勤怠管理システムの導入は必要と言えるでしょう。

また、就業時間外の労働を抑制するため、アラートを通知する、強制的に社内システムからログアウトさせる、PCをシャットダウンするといった仕組みを導入している企業もあります。

就業状況の把握はどこまで必要なのか

しかし、こうした就業状況の把握は、「監視されている」と負担に感じる従業員も少なからずいます。実際に監視を目的としたITの仕組みを提供しているベンダーも多数あります。こうした仕組みの主な機能には次のようなものがあります。

PCログの監視
PCを起動した時間、シャットダウンした時間、キーボードやマウスに触れていない時間を監視する
使用しているアプリケーションの監視
業務に関係のないアプリケーションが導入されていないかどうかを監視する
アプリケーションごとの使用時間の監視
どのアプリケーションをどのくらいの時間使用したのかを監視する。PCに向かっていても社内チャットばかりしていないか、効率よく業務ができているかなどを可視化する
Webブラウザーの閲覧先の監視
業務に関係のないサイトを訪問していないかを監視する

業務状況を管理しないことで負担を感じる人もいれば、監視されていると負担に感じる人もいるため、とても難しい問題であることは間違いありません。就業時間内に業務に関係のないコトをしていないかどうかを監視したいという気持ちは理解できますが、やり過ぎると従業員のモチベーションが低下して業務効率が下がることもあります。ずっと監視されながら仕事をしなければならないのですから、従業員にはストレスになるでしょう。

しかし、個人情報など非常に機密性の高い情報を扱うような業務、あるいは明確な成果物が無く業務状況を把握しづらい業務に従事している場合には、自分が不正を犯していないことやサボっていないことを証明するために監視して欲しいと従業員が要望することもあります。

以前、業務中は常にオンライン会議にログインし、カメラをオンにすることを求められたという企業の話を聞いたこともありますが、従業員からハラスメントにあたるのではないかという指摘を受けて中止しています。その一方、人事部門でリモートワークを導入した企業では、従業員のマイナンバーを扱う業務を行う場合には担当者のカメラ映像も含め、必ず複数の監視ツールを動作するようにしているそうです。重要なのは管理する側と管理される側の双方が「業務上、監視が必要」と合意していることなのではないでしょうか。

ITだけでは解決できない

付け焼き刃的にリモートワークを導入した時期は過ぎ、現在はリモートワークを含めた多様な働き方の課題が見えてきています。こうした多様な働き方に関連した課題は、ITの仕組みだけで解決することはできません。多様な働き方に応じた人事評価制度の改定、業務プロセスの見直し、メンタルヘルスも含めた従業員のケアが不可欠です。

これは決してリモートワークだけの問題ではありません。たとえばプログラマやデザイナーなどモノを作り出す業務に従事している場合、「考える時間」が必要になります。他の人から見れば何もしていないように見えていても、頭の中では業務のことを考えているかもしれません。この考える時間をどのように評価するかを企業は検討しなければなりません。もちろん、定量的な業務に従事している従業員の評価も同様です。その結果として策定される人事評価制度は、その企業で働く従業員、あるいはその企業で働きたいと考える多くの人材から逆に評価されることになります。

超少子高齢化社会によって、日本の労働人口はどんどん減少しています。今後、ますます人材の奪い合いは厳しいものとなっていくでしょう。人材の定着率は、こうした人事評価制度にも大きく左右されます。働き方改革という言葉が使われるようになって久しいですが、今こそ抜本的な改革を実施すべき時期が訪れていると言えるのではないでしょうか。

まとめ

リモートワークを導入した企業の多くが業務管理に課題を抱えている
多様な働き方を支えるのはコミュニケーションプラットフォーム
リモートワークを含めた多様な働き方に応じた人事評価制度や業務プロセスの見直しが必須

リモートワークにおける業務管理

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