2022年11月に登場したChatGPTの後押しもあり、自治体におけるAI活用の流れが加速しています。例えば神奈川県・横須賀市では、2023年4月より自治体で初めて全職員にChatGPT利用を開放する活用実証を行い、その後本格実装を決定しました。その他自治体でも、AIを業務に取り入れる動きが見られます。そこで今回は自治体におけるAI活用事例を紹介します。

自治体におけるAIの導入状況

総務省は、2023年12月31日時点におけるAI・RPAの導入進捗状況について、1,788の都道府県・市区町村に対してアンケートを実施しました。同アンケートで明らかになった、自治体のAIの導入状況は以下のとおりです。

・導入済み団体数は都道府県・指定都市で100%
・その他市区町村では50%の団体が導入済み。実証中・導入予定・導入検討中を合わせると約72%の団体がAI導入に前向きに取り組んでいる
参考：自治体におけるAI・RPA活用促進｜総務省

なお、2019年度における都道府県のAI導入済み割合は68%、指定都市が50%、その他市区町村が8%でした。この5年間で自治体におけるAI導入が一気に進んだことが分かります。

自治体におけるAI活用事例5選

ここからは自治体における具体的なAI活用事例を5つ紹介していきます。

神奈川県・横須賀市：自治体初、ChatGPTを導入

2023年4月、神奈川県・横須賀市では、他の自治体に先駆けてOpenAI社の生成AI「ChatGPT」を試験導入。安全性を確認した上で、同年6月からChatGPTの実装を開始しています。

具体的に横須賀市職員は、文章案の作成や要約、アイデア出し、知りたい情報の検索などの用途でChatGPTを活用。例えば、文書作成業務に慣れていない職員は、ChatGPTで行政文書の土台を作成するケースがあります。

実装後の職員からの評価は上々で、「ChatGPTを利用すると仕事の効率が向上すると思いますか」とのアンケート質問には、8割以上の職員が業務の「効率が向上する」と回答。利用意向についても「75%の職員が利用意向あり」と答えています。

なお、横須賀市ではChatGPTを直接ブラウザ経由で使用せず、自治体専用のビジネスチャットツール「LoGoチャット」とAPI連携して、LoGoチャット上で質問や指示等の入出力を行う仕様で実装しています。

三重県・桑名市：広報動画制作や校歌作成にAIを活用

三重県・桑名市では2023年4月より生成AI活用の検討を開始し、現在は様々な用途でAIを業務に取り入れています。例えば、同市では動画生成AIで広報動画を制作しました。

中学生向けくわな未来ワークショップを開催します｜桑名市公式チャンネル
https://www.youtube.com/watch?v=RXHGZRPJb_M

動画の作成時間はなんと15～30分程度。担当者によると「簡単に動画作成ができ、広報手段が格段に増える」「作成時間の削減も見込める」などの効果が見込め、今後も活用法について調査・研究していくようです。

さらに桑名市では全国で初めて、2026年4月開校予定の小中一貫校「市立多度学園」の校歌をAIで作詞・作曲することを発表しました。子どもや保護者から募集した、歌詞に入れたいワードをもとにAIが作詞を進め、その歌詞に合うメロディーをAIに指示して校歌を作曲する予定です。

東京都・品川区：AI検索サービス導入による戸籍事務の効率化

2022年8月、東京都・品川区では全国で初めて、戸籍専門書籍約370冊の文献データを瞬時に検索できる、AI検索サービスの利用を開始しました。

同区ではかつて戸籍届書を処理する際には、執務室にある大量の紙資料の中からあたりをつけて、一つひとつ該当の資料を探しており、担当職員の業務負担が課題となっていました。

そこで2020年11月～2021年3月末まで、専門書籍約300冊以上の文献データを検索できるAI検索システムの実証実験を実施。同実験では、1ヵ月における約150件の調査時間を従来の77時間から40時間に短縮させることに成功しました。

同実験の結果を踏まえ、品川区ではAI検索サービスの本格導入を決定し、戸籍事務の業務効率化・区民対応の時間短縮を進めています。

長野県・松本市：フレイル予防に電力データ×AIの実証実験

2013年に健康寿命延伸都市宣言を行った長野県・松本市では、2022年5月より市民のフレイル予防に電力データおよびAIを活用する実証実験を行いました。

「フレイル」とは、要介護に認定される前の、加齢により心身機能が低下した状態を指します。実験ではすでに設置済みの各家庭の電力メーターのデータをAIが分析し、フレイル予防の必要性を確認します。そして、予防が必要だと判断された場合は専門職員に通知が行き、その後、地域包括支援センターや病院などが連携し、予防対策を講じます。

AIがフレイルの早期発見および適切な予防改善活動に資することで、市民の健康増進および医療費・介護給付費抑制効果が期待できます。

東京都・港区：多言語AIチャットによる情報発信

東京都・港区には約130ヵ国の国籍を持つ約2万人の外国人が暮らしています。そこで同区では外国人向けに、AIを活用した、チャット形式で自動回答するサービスを展開。暮らしの疑問や行政サービス等に関する問い合わせに対して、英語や易しい日本語で答えていきます。加えて、同サービスでは、日本の生活習慣や文化の違い等のミニ知識も提供しています。

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まとめ

自治体におけるAI導入は加速している
神奈川県・横須賀市では自治体で初めてChatGPTを導入。職員満足度も上々
東京都・品川区ではAI検察サービスの活用により、戸籍事務の業務効率化等を進めている