17のゴールと169のターゲットで構成されるSDGs。SDGsに取り組むことで、企業にはブランドイメージ向上のほか、取り組み内容によっては離職防止やクライアントとの関係強化などの効果が期待できます。では、具体的にIT中小企業はどのような取り組みを進めているのでしょうか。今回は取り組み事例を紹介します。

中小企業のSDGsに対する認知度・実践度

中小企業におけるSDGsの認知度は拡大傾向にあります。

やや古いデータですが、2020年11月に一般財団法人日本立地センター・関東経済産業局が実施した「SDGsの認知度等に関するWEBアンケート調査」によると、SDGsを認知している中小企業は前回調査時（2018年10月）と比べて3倍以上の50.4%に上ります。

同時に、同調査では「SDGsに取り組み中または検討中の中小企業は8.2%」という結果も出ており、まだ具体的なアクションを起こす中小企業は少ないことも判明しました。

SDGsの認知度がかなり高まってきた2023年においても、これらの調査結果を別の視点で考えれば、中小企業については「SDGsに取り組むことで、他社と差別化が図れる可能性が高い」と言えるでしょう。

参考：＜令和2年度版＞「2020年度中小企業のSDGs認知度・実態等調査概要版」｜関東経済産業局

ハイパーと出来るSDGsへの取り組み！「環境コンサルティングサービス」

詳細：https://hypervoice.jp/environment-consulting

IT中小企業のSDGs取り組み事例5選＋α

IT中小企業のSDGs取り組み事例を5社＋α紹介しています。中には特別な準備が必要なく、すぐにでも取り組める事例もありますので、ぜひ参考にしてください。

関連記事：中小企業でも取り組めるSDGs

株式会社建設システム：情報リテラシーを学ぶ講座開催

株式会社建設システムは、施工管理ソフトウェアの開発・販売を手掛けているIT企業です。社会貢献事業として、情報リテラシーを学べる「スクールエンジニア検定エンサップ」も提供しています。

同社は2023年7月に茅ヶ崎市社会教育課と連携し、児童・保護者向けに2つの情報リテラシーを学べる講座を開催しました。背景には、茅ヶ崎市の「児童と保護者が一緒に情報リテラシーを学べる機会がない」という課題意識があります。

講座では成果物として「マイルール」を親子で作成し、家庭に持ち帰ってもらうことで、日々の生活の中でも実践できるような工夫を施しました。

なお、この取り組みでは「4.質の高い教育をみんなに」というSDGsのゴールに貢献しています。本業をうまく活用したSDGsの取り組みと言えるでしょう。

参考：つくろうマイネットルール　～わが家を守るトリセツ～　神奈川県茅ヶ崎市（教育委員会教育推進部社会教育課） × 株式会社建設システム（ＫＥＮＴＥＭ）｜地方創生SDGs官民連携プラットフォーム

株式会社システムズ：ダイバーシティへの取り組み等

株式会社システムズは、ITリノベーションサービスやクラウド移行ソリューションなどを展開しているIT企業です。同社ではさまざまなSDGsゴールを目指し、取り組みを進めています。

例えば「5.ジェンダー平等を実現しよう」をゴールに、女性だけでなく男性へ育児休暇取得の機会提供をしています。また「9.産業と技術革新の基盤を作ろう」というゴールの実現に向けては、オンライン研修の機会を社員へ提供し、費用はすべて会社負担としています。

そのほかのゴールに紐づく取り組みについても、同社はホームページで公開中です。ゴールに向けて、社員一丸となりアクションを起こしています。

参考：システムズのSDGsの取り組み｜株式会社システムズ

株式会社信興テクノミスト：環境マネジメントシステムの構築

株式会社信興テクノミストは、システム構築・開発・運用等を行うIT企業です。同社は2001年からいち早く環境マネジメントシステムの構築に取り組み、ゴミの排出量や消費電力、紙使用量の増減をモニタリング。ゴミや紙、電気の削減を進めています。

そのほか、フレックス制度やノー残業デーの実施などにより、平均残業時間の大幅削減も実現しました。

参考：信興テクノミストはSDGsに賛同しています｜株式会社信興テクノミスト

株式会社システムファイブ：住宅手当の支給＆テレワークの推進

映像システムの構築やプロ向け映像音響機器販売サイトの運営などを手掛ける株式会社システムファイブでは、SDGsゴール「11.住み続けられるまちづくりを」に関連して、居住環境に応じた住宅手当を支給しています。同手当による住宅費の軽減は、居住エリアや物件の選択肢拡充に寄与します。

加えて、主にパソコンで業務を行う職種・部署についてはテレワークを推進することで、会社都合による転居をなくし、住み慣れた街で仕事ができる環境を整備。同社はテレワークについて「地方の過疎化は日本にとって非常に大きな問題ですが、その解決に向けた施策の一つとして、今後も取り組みを継続していきます」と述べています。

参考：SDGsへの取り組み｜株式会社システム

株式会社リードライフ：独居老人等の見守り

株式会社リードライフは、終活・⽣前整理をサポートするアプリ「⽣前整理アプリ」や高齢者の生体状態を遠隔で確認できるセンサー「ミマモラート」を開発・販売しているIT企業です。

同社と三重県いなべ市はSDGsの取り組みとして、「ミマモラート」を活用した独居老人等の見守り事業の実証実験を行いました。

実験では、ミマモラートが施設の夜間見回りや訪問介護サービス利用者の安否確認に活用できるのか。さらに介護従事者の負担軽減に寄与するのか、効果検証を行いました。

本業がそのままSDGsに生かされた取り組みです。

なお、この取り組みでは「3.すべての人に健康と福祉を」や「17.パートナーシップで目標を達成しよう」などのSDGsゴールに貢献しています。

参考：テクノロジーを活用した独居高齢者等の見守り事業三重県いなべ市 × 株式会社リードライフ｜地方創生SDGs官民連携プラットフォーム

その他IT中小企業のSDGsの取り組み

その他のIT中小企業でも、多様なSDGsの取り組みを進めています。

株式会社LIFRELL lifrell.inc：地域の清掃活動への参加や日本財団「海と日本PROJECT」を含む各種団体への寄付など
株式会社ラフ：社内研修会や社内レクリエーション大会など、社内コミュニケーションを円滑にするためのイベントの実施
SMTシステムズ株式会社：マイボトルの持参、オフィスの節電など
合同会社KTラボ：ウォーターサーバーを設置し、プラスチックごみを削減
株式会社GoA：徹底したゴミの分別

SDGsの取り組みは、必ずしも大規模である必要はありません。事実、上記のとおり身近なところから着手している中小企業も少なくないようです。

まとめ

中小企業におけるSDGsの認知度は拡大しているが、実践している企業数は少ない
IT中小企業によっては、本業を活かしたSDGsの取り組みを進めている
身近なところからSDGsに着手しているIT中小企業も多い