中国を背景とするハッカー集団「ブラックテック（Black Tech）」が世界各国の企業や組織から機密情報を盗み出しているとして、日本政府・警察庁から注意喚起が発出されています。巧みなサイバー攻撃を仕掛けてくるというブラックテックの手口は、一体どういうものなのでしょうか。また、どのように防げばいいのでしょうか。

ブラックテック（Black Tech）とは？

ブラックテックの存在が確認されたのは2010年頃。日本を含む東アジアおよびアメリカの政府、産業、技術、メディア、エレクトロニクス、電気通信分野を標的として、サイバー攻撃を繰り返して情報窃取を行っていることが確認されています。

2023年9月には、警視庁と内閣サイバーセキュリティセンターが、米国家安全保障局（NSA）、米連邦捜査局（FBI）、米国土安全保障省サイバーセキュリティ・インフラ庁（CISA）とともに、ブラックテックによるサイバー攻撃に関する注意喚起を合同で行いました。

標的となっている企業や組織に、ブラックテックによる脅威を認識して適切な対策を講じてもらうためです。

ブラックテックに狙われやすい標的や手口

ブラックテックはネットワークに接続された機器の脆弱性を狙い、サイバー攻撃をしかけてきます。設定が正しくなかったり、サポートが切れたりした機器やソフトウェアなどは特に攻撃の対象になりやすいことが指摘されています。

攻撃の足掛かりとして狙われるのは、小型のルーターを用いている海外子会社などの拠点や、テレワーク中のホームルーター、VPNなど。セキュリティが十分ではないところから侵入し、組織内のネットワークへ攻撃を拡大していきます。

また、ブラックテックはインターネット上に公開された脆弱性リストも参考にしていると見られています。脆弱性リストの1つがCVE（共通脆弱性識別子）です。このCVEプログラムの管理は、CISAが資金援助をし、MITRE社が行っています。CVEリストは、ユーザーやベンダーなどが、機器やソフトウェアの脆弱性を認識し、セキュリティ対策を行うために公開されているのですが、ブラックテックがこれを悪用しているということは、脆弱性が公開されたら即、対応を行う必要があるということです。

2020年に某大手電機メーカーが大規模なサイバー攻撃の被害にあい、防衛に関する機密情報や個人情報が流出するという事件が起こりました。これもブラックテックによる犯行だと考えられています。

このとき、不正アクセスの起点となったのがVPNでした。同社の中国拠点でコンピューターウイルスの感染が広がり、そこから日本国内の本社にも感染が拡大しています。ハッカーは遠隔操作を行い、社内のPCやサーバーに不正アクセスを繰り返していたことが分かっています。

2018年には文部科学省を装った偽メールが学術関係者に送られたことがあり、このころからブラックテックによる日本へのサイバー攻撃が増えてきたと見られています。

ブラックテックからの攻撃を防ぐには

ブラックテックからいったん攻撃を受けると、排除しても時間をおいて再度攻撃をしかけてくるケースがあるといいます。ほかのサイバー攻撃と異なり、狙った企業や組織に長い時間潜伏して攻撃を続けるのが特徴的です。

とはいっても、ブラックテックからのサイバー攻撃を防ぐために行う対策は特殊なことではありません。ほかのサイバー攻撃対策と同じことをしっかり行うことが大切です。

ゼロトラストはブラックテック対策としても有効な方法の1つです。

各種機器やソフトウェアの脆弱性を放置することは厳禁です。迅速にセキュリティパッチを適用し、可能なら脆弱性管理・パッチ管理を行うプログラムを導入します。

脆弱性については、各メーカーのサイトやCVE（https://cve.mitre.org/）が参考になります。

組織内のすべての端末のエンドポイントセキュリティを強化し、組織内ネットワークにつなぐネットワーク機器をチェックします。特に、海外の拠点にあるネットワーク機器やテレワーク時に使う家庭用ルーターは管理が手薄になりがちなので、注意を払います。家庭用ルーターは、各従業員が以下のポイントを守るようにしましょう。

● ID、パスワードは初期設定のまま使わない
● 常に最新のファームウェアに更新する
● サポート期間が切れたルーターは買い替える
● 見覚えのない「VPN機能設定」や「DDNS機能設定」「外部からルーターへの管理画面への接続設定」が有効化されていないか確認する。

組織内ネットワークにアクセスするアカウントの権限は適切に管理し、本人認証も強化しておくべきでしょう。ゲストアカウントを発行した際には、必要なプロジェクトが終わったら速やかに削除することも大切です。

ネットワーク内で不審な動きがないか監視できるようなシステムを導入し、継続的に監視を行うという対策もあります。万が一、インシデントが起きたときにはすぐ対応できるように、インシデント対応計画・システム復旧対応計画をあらかじめ立てておきましょう。

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まとめ

・中国が背景にあるハッカー集団「ブラックテック」のサイバー攻撃が相次いでいる
・いったん組織内ネットワークに入り込むと長い期間攻撃を繰り返すのが特徴
・ゼロトラスト、エンドポイントセキュリティなどで防御を