年々、深刻化を増すサイバーセキュリティリスク。近年は日本の基幹産業である自動車産業もサイバー攻撃に悩まされています。そこで今回は、自動車産業のサイバーセキュリティレベル向上を目的に策定された「自工会/部工会・サイバーセキュリティガイドライン」の概要やポイントについて解説します。

自工会/部工会・サイバーセキュリティガイドラインの概要

自工会/部工会・サイバーセキュリティガイドラインとは、サイバーセキュリティリスクの増加を背景に、自動車産業全体のサイバーセキュリティ水準の向上のため、日本自動車工業会（以下、JAMA）と日本自動車部品工業会（以下、JAPIA）が共同で策定したガイドラインのこと。2020年3月に初版が策定され、2022年3月と2023年9月に改訂されました。

ガイドラインでは「要求事項と達成条件（実施すべきセキュリティ対策の項目）」として、24のラベル（カテゴリ）とレベル別に153のチェック項目が示されており、企業のセキュリティポリシー策定やセキュリティ対策の実装などに役立てることができます。

なお、JAMAおよびJAPIAでは要求事項と達成条件をまとめた「チェックシート V2.1」を公開し、2023年中に回答の提出をお願いしていました。

ガイドラインの対象範囲

自工会/部工会・サイバーセキュリティガイドラインが対象とする範囲は、あらゆる企業が対応すべきエンタープライズ領域（OA環境）です。

出典：JAMA・JAPIA 自工会/部工会・サイバーセキュリティガイドライン

つまり、ガイドラインでは「自動車業界含め、全ての業界で取り組むべきセキュリティ項目が示されている」と言えるでしょう。なお、今後は自動車業界にフォーカスしたセキュリティ対策が解説されるものと予想されます。

ガイドラインの要求事項＆達成条件（実施すべきセキュリティ対策の項目）

自工会/部工会・サイバーセキュリティガイドラインでは、24のラベル（カテゴリ）と1～3のレベル別※に153のチェック項目が設けられた「要求事項と達成条件」が示されています。

出典：JAMA・JAPIA 自工会/部工会・サイバーセキュリティガイドライン

企業は要求事項と達成条件を確認し、必要に応じて対応を取ります。

また、24のラベル（カテゴリ）は、機密情報を取り扱うルールや事故発生時の手順など幅広くカバーされています。例えば、以下はラベル「15社内接続ルール」の項目の記載です。

出典：JAMA・JAPIA 自工会/部工会・サイバーセキュリティガイドライン

要求事項と達成条件について、「何から着手しようか…」と迷う場合には、まずは“自動車業界として最低限、実装すべき項目”であるレベル1の項目を優先して点検および対応を行い、次にレベル2→レベル3への対応を進めていきましょう。

ガイドラインの活用方法

自工会/部工会・サイバーセキュリティガイドラインについては、年1回以上または必要に応じたチェックが推奨されています。その上で、ガイドラインでは以下の活用方法を想定しています。

・企業におけるセキュリティポリシーの策定および対策の実装
・自動車産業における信頼のチェーン構築への活用
・企業におけるセキュリティの教育・訓練・啓発活動への活用

上記のようにガイドラインを用いることで、自動車産業における基本的なセキュリティ対策を講じることができます。なお、ガイドラインの内容を踏まえた、自動車業界で求められるセキュリティ対策について知りたい方は、Webセミナー「ガイドラインを有効利用！サプライチェーン攻撃と真っ向勝負するには（2024年4月18日14時～）」への参加もご検討ください。

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まとめ

・自工会/部工会・サイバーセキュリティガイドラインは自動車産業のサイバーセキュリティレベル向上を目的に策定された
・ガイドラインの対象範囲は全ての企業が取り組むべきエンタープライズ領域
・レベル1→2→3の順で「要求事項と達成条件」の点検＆対応を進める