年々増加・巧妙化するサイバー攻撃。日本政府、各省庁はどのような情報セキュリティ政策を行い、対策しているのでしょうか。IPA（情報処理推進機構）が発行している「情報セキュリティ白書2024」の記載内容を中心に、政府・各省庁の対策を紹介します。

日本政府全体の政策

政府は3年ごとに「サイバーセキュリティ戦略」を改定し、各年度のセキュリティに対する年次計画を文書化しています。2024年7月に発表された「サイバーセキュリティ 2024」の概要を見ていきましょう。

2023年度は、サイバー攻撃の洗練化や巧妙化がさらに進展し、政府機関などへの攻撃、重要インフラ事業者などのサプライチェーン攻撃、ランサムウェアなどの被害が拡大しました。犯行グループには国家を背景とするものもありました。

このような状況下で、国家安全保障戦略としてサイバー防御の強化、能動的なサイバー防御の導入、そしてその実現に向けた政策として特に以下の3点に取組むとしています。

～政府機関や重要インフラ等の対処能力の向上～

国民が安心してサイバー空間に参画できるように、多層的なサイバー防御態勢を構築します。そのために、政府機関がサイバーセキュリティ体制の抜本的強化を進め、重要インフラ全体のサイバーセキュリティの底上げを目指します。公的機関のIPA2やNICTとの連携強化も同時に進めます。

～サプライチェーン・リスクへの対応強化とDX を推進・支援する取組の強化～

DXとサイバーセキュリティ推進を同時に行う“DX with Cybersecurity”の実現に向け、経営層の意識改革、中小企業に対する取組み、新たな価値創出を支えるサプライチェーンなどの基盤づくりにくわえ、社会全体でリテラシーを高めることが大切だとしています。

欧米諸国を中心に議論が加速する、製品・サービス等のシステムの企画・設計段階からサイバーセキュリティを確保すべきという考え方を踏まえ、同様な取り組みを行っていきます。

～欧米主要国をはじめとする関係国との連携の一層の強化～

サイバー安全保障分野の対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させるために、「同盟国・同志国をはじめとする関係国との連携の一層の強化」を必要としています。捜査機関は各国の捜査当局との共同捜査に参加し、サイバー空間の安全・安心の確保に取組みます。

デジタル庁の政策

セキュリティに関するドキュメントを2022年、2023年に公開し、サイバーセキュリティ戦略本部で決定された「政府機関等のサイバーセキュリティ対策のための統一基準（令和5年度版）」に修正とともに、以下のようなドキュメントの改定を行いました。

情報システムの企画から運用まで一貫したセキュリティ対策を行う「セキュリティ・バイ・デザイン」を実施するため、各工程でのセキュリティ実施内容や要求事項、関係者の役割定義を記載したドキュメントです。

政府全体のサイバーセキュリティリスクを早期検知・低減のための活動を継続的に実施するため、情報収集・分析を目的としたプラットフォームのアーキテクチャを記載したドキュメントです。

政府情報システムのサイバーレジリエンス確保のための最適な脆弱性診断導入の基準と指針を記載しています。

また、2023年度には以下のようなドキュメントを新たに制定しています。

CI/CDとはContinuous Integration（継続的インテグレーション）/ Continuous Delivery（継続的デリバリー）のこと。サイバー攻撃者は、コードに直接アクセスし、変更してしまうことがあるため、CI/CD パイプラインをセキュリティの観点から解説しています。

安全保障等の機微な情報を扱うシステムで、注意が必要なリスクやその対策、クラウド化、データ連携の留意点などをまとめています。

サイバー空間のみではなく、フィジカル空間を統合したサプライチェーン全体にわたるセキュリティ施策を検討・実施しています。経済産業省の正確から、制度・標準化、経営・人材・ビジネスなどさまざまな観点から行っているのが特徴です。

「社会経済活動を支える情報通信ネットワークの安全を確保し、サイバー空間を利用するすべての国民のサイバーセキュリティの向上を図ること」を総務省におけるサイバーセキュリティの役割としています。

2023年8月には「ICTサイバーセキュリティ総合対策」を公表。総合的なIoTボットネット対策の推進や、電機通信事業者、Beyond 5G・6G、スマートシティなどに向けたサイバーセキュリティの対策や検討について記載されています。

サイバー空間の脅威に対処するため、警察庁及び都道府県警察の体制構築、優秀な人材の確保・育成などを行っています。

また、サイバー被害の通報・相談があった場合の対応強化推進やその実態解明なども施策として挙げています。

政府、各省庁の対策については、ホワイトペーパーや報告書がHPで公開されています。詳細が知りたい場合は、政府、各省庁のHPをチェックしてみてください。