クラウドサーバー利用率は年々高くなっています。クラウドサービスは、提供するベンダーがバックアップやセキュリティ対策も担っていますが、それでもリスクは残ります。ユーザー側で気をつけなくてはいけないことの一つが、1社のベンダーに依存してしまう「クラウドロックイン」です。

クラウドロックインとはなにか？

クラウドサービスの市場は、日本でも世界でも年々拡大しています。日本のパブリッククラウドサービス市場は、総務省の発表によると、2021年で1兆5,879億円（前年比28.5％増）でした。

コロナ禍でハイブリッドワークやテレワークが進んだことなどから、その後も毎年市場はますます拡大しています。

パブリッククラウドをPaaSまたIaaSで利用している企業の、クラウドサービスシェアをMM総研が分析しています（「国内クラウドサービス需要動向調査」（2022年6月時点））。

それによると、PaaSではAWS（Amazon Web Service）が約60.0％、Microsoft Azureが48.2％、Google Cloud Platformが28.8%、IaaSではAWSが54.7%、Azureが44.0%、Google Cloudが26.2％となっており、大手3社がパブリッククラウドの大半を占める状況になっています。

多くの企業が、クラウド提供ベンダー1社のサービスに依存していることが多いことも判明しています。

公正取引委員会が2022年6月に行った調査で、いったんパブリッククラウドを契約すると他社のクラウドやオンプレミスに移行することはほとんどない、という結果が出ています。

このようにパブリッククラウドを1社に依存する状態を「クラウドロックイン」または「ベンダーロックイン」といいます。

クラウドロックインの問題点

一部のベンダーが提供するクラウドにユーザーが集まってしまうのは、独占禁止法に抵触する可能性があるという問題がまず生じます。海外のクラウドサービスに市場が占められている現状は、日本のITベンダーにとっても好ましいとは言えません。

また、ユーザーにもクラウドロックインはリスクがあります。

クラウドベンダーは、自然災害やシステム障害でのデータ損失を防ぐために、複数のデータセンターを用いて二重、三重に冗長化を行っているので、何かが起きてもデータが失われる可能性はかなり低くなっています。

そうはいっても、100％の保障があるわけでもありません。時には、予想し得なかった事態が起こることがあります。

その場合、1社のクラウドに依存しているとデータ消失のリスクが出てきます。完全に失われることがなかったとしても、一時的にクラウドにアクセスできないこともあり得ます。

実際に、クラウドの大規模障害でWebサイトへのアクセスが不可能になったり、デジタル家電が動作しないなどのトラブルが起きたりということが過去に起きています。

大手ベンダーであれば、セキュリティ対策も強固なものになっていますが、それでも絶対とは言い切れません。

クラウド利用の際、データ保護の責任はユーザー側にあるという契約になっています。最終的に自社のデータやシステムを守るのは、クラウドベンダーではなく、自社なのだということを頭に入れておかなければなりません。

クラウドロックインを防ぐには

サービスごとに異なるベンダーのクラウドを用いる「マルチクラウド」、またはオンプレミスサーバーや他社クラウドと組み合わせて使う「ハイブリッドクラウド」を導入し、1社のクラウドに依存しないようにしましょう。

マルチクラウドは、例えばストレージはA社、業務アプリはB社などと用途やサービスごとにクラウドを分けて使う方法です。

社内向けアプリと顧客向けアプリで分ける、業務部門ごとに分ける、メインストレージはA社、そのバックアップはB社に分けるなどの利用法が考えられます。

ハイブリッドクラウドは、クラウドとオンプレミス、または複数のクラウド（パブリッククラウドとプライベートクラウドなど）を統合して単一システムを作る方法です。

BCP対策やDR対策としては、冗長化やリスク分散、バックアップなどが簡単にできるマルチクラウドが優位なのですが、管理をそれぞれのクラウドごとに行うため作業が繁雑になるデメリットがあります。

ハイブリッドクラウドは、一元管理できるシステムにすることが可能ですが、システム構築が複雑になりがちで、マルチクラウドに比べて導入ハードルは高くなってしまうことがあります。

ただ、マルチクラウドからハイブリッドクラウドに移行するケースもあるため、クラウドロックインしている状態の場合は、最終的にどのようなシステムにしたいのかをシステム管理者やベンダーと相談するといいでしょう。

まとめ

クラウドロックインする企業が多い
1社に依存するとリスクが高くなる
マルチクラウド、ハイブリッドクラウドでデータ分散を