各社ブラウザーが段階的にサードパーティクッキーを廃止し、消費者にパーソナライズしたリターゲティング広告を行っていたデジタルマーケティング業界では、クッキーレスという問題に直面しており、Google Chromeのサードパーティ廃止が2024年7月からと目前に迫っています。
今後デジタルマーケティングは、一体どうすべきなのでしょうか。

ファーストパーティクッキーとサードパーティクッキー

クッキー（Cookie）は、WebサイトやWebサーバーにアクセスした人の情報をWebブラウザーに保存させるしくみです。初めてWebサイトに訪問したとき、そのWebサイトで入力したIDや閲覧情報などが保存され、2回目以降に訪問したときにはそのクッキーをもとに、Webサイト側から情報を提供します。

クッキーには、サイト訪問者がアクセスしているドメインと同じドメインの下に情報が保存される「ファーストパーティクッキー（1st party Cookie）」と、別のドメインに保存される「サードパーティクッキー（3rd party Cookie）」があります。

ファーストパーティクッキーは、ECサイトなどでユーザーの識別、ショッピングカートへの保存、支払い情報などに用いられています。クッキー廃止の対象にはなりません。

サードパーティクッキーは、ユーザーの属性やWebサイトの閲覧情報などをもとに、ユーザーの特性、ニーズに合った広告を配信する「リターゲティング（追跡型）広告」などに用いられています。今回、段階的に廃止になるのはこちらです。

サードパーティクッキーの廃止は個人情報保護のため

2018年にヨーロッパでGDPR（EU一般データ保護規則）、2020年に「カリフォルニア州消費者プライバシー法 2018年」（California Consumer Privacy Act of 2018＝CCPA）などが施行され、クッキーは個人情報として扱われることになりました。

これによりクッキーが全面禁止になったわけではないのですが、クッキーを利用する場合には必ずユーザー許可を求めなければならなくなりました。

このような流れから、Apple Safariは先行してサードパーティクッキーをデフォルトでブロックしました。Microsoft Edgeは、サードパーティクッキーを「バランスがとれたもの」にしていると説明しており、ユーザーが追跡防止を強化したり、サードパーティクッキーをすべてブロックしたりできるようになっています。Mozilla Firefoxは、ユーザーがサードパーティクッキーを有効化／無効化できるようにしています。

世界でいちばんユーザーが多いGoogle Chromeは2024年7月から段階的にサードパーティクッキーを廃止すると発表しています。Chromeユーザーは世界でも日本でも約6～7割のシェアがあるため、リターゲティング広告をそのまま続けていくのは難しくなりそうです。

クッキーレス時代にできるマーケティングは？

クッキーと似たような技術に、次のようなものが開発されています。すべてのブラウザーをカバーするものにはなっていませんが、例えば、ユーザーの多いChrome限定に絞ってPrivacy Sandboxを用いるのも一つの手です。

■Privacy Sandbox：Googleが提案する、サードパーティに代わるシステム。「Topics API」というアルゴリズムが採用され、ユーザーの閲覧履歴をもとにして、興味・関心を表すトピックを推測し、Webサイト側に伝えます。その際、ユーザーを特定できないような対策が施されるので、サードパーティクッキーよりはプライバシーが守られる上に、どのような情報が送られるのかをユーザーが知ることもできます。知られたくない情報やWebサイトをユーザーがコントロールできるようにもなっています。

■フィンガープリント（ブラウザーフィンガープリント）： Webサイトを訪れたユーザーの識別や同定を行うために、デバイスに固有な短いデータ列を算出します。クッキーを用いなくてもデバイスの識別ができるため、リターゲティング広告に応用できます。

ただし、これらの代替手段は、サードパーティクッキーを超えることはなさそうです。なぜなら、サードパーティクッキーで得られる情報は個人情報として扱わなければならないため、代替方法では得られる情報が確実に減るからです。

そうなると、リターゲティング広告はあきらめて、ほかのマーケティング手法を用いることも考えたほうがよさそうです。

まずは、ゼロパーティデータの収集。これは、データ利用を承諾してくれたユーザーの情報を用います。

また、コンテキストマッチングも効果的です。WebサイトやSNSに、サイトの内容と関連性が高い広告を掲載し、クリック数を上げる「コンテンツ連動型広告」という手法の1つです。

さらに、Webコンテンツから、そのサイトを訪れるユーザーの興味・関心などのコンテキスト（文脈）を導きだします。従来型のコンテンツ連動型広告では、そのサイトで紹介している製品の広告を掲載するのが主流でしたが、ユーザーがなぜそのサイトを見ているのかという文脈を把握し、関連製品の広告を出したりします。

今後は、ゼロパーティデータと、製品を購入してくれたユーザーの属性などから次の広告出稿メディアを探していくといいかもしれません。

まとめ

・Webブラウザーは段階的にサードパーティクッキーを廃止

・クッキーと似たような技術はあるが、精度は落ちる

・デジタルマーケティングの方法を見直す必要もある