近年、IT技術が広く普及し、多くの企業に自社サーバーが設置されています。しかし社内でサーバー運用を行うにも限界があり、自然災害や事故が発生した際のBCP対策まで手が回らない、という企業も多いのではないでしょうか。そこで注目を集めているのが、サーバーの賃貸マンションともいわれる「ハウジングサービス」です。なぜハウジングサービスがBCP対策になるのか、企業へのメリットやデメリットとあわせて解説します。

◆ハウジングサービスとは？

ハウジングサービスとは、ハウジング事業者のデータセンター内に自社のサーバーを預けることができるサービスです。サーバーのシステム運用を委託するわけではなく、サーバーラック等の「置き場所」を提供するサービスであり、設置するサーバーはあくまでも「自社サーバー」であることが特徴です。
ハウジングと似た「コロケーション」というサービスもありますが、この二つは本質的には同じサービスであるといえます。ハウジングサービスは基本的に「サーバーラック」を提供していますが、コロケーションは「スペース」を提供するサービスです。

ハウジング事業者のデータセンターは安定したネット回線はもちろん、空調設備や厳重な警備、電源の確保など、サーバーを安全に保管することができる環境が整えられています。しかしハウジングサービスの最大の強みは、なんといっても災害対策です。地震や津波といった天災に見舞われやすい日本では、ハウジングサービスは各企業におけるBCP対策としても注目されています。

◆ ハウジングとホスティングの違い

ハウジングとよく似たサービスに、ホスティングというサービスもあります。データセンターを利用して自社から離れた場所にサーバーを設置する点は同じですが、ホスティングサービスの場合、データセンターのサーバーの一部をレンタルするため、サーバーそのものはホスティング事業者のものであるという点が異なります。

一般的には、ホスティングサービスの方が安価で、すぐに導入可能です。その代わり、サーバー構成や回線などを自由に選ぶことはできず、サーバーダウンなどのトラブルがあった場合はホスティング事業者の復旧処理を待つ必要があります。

◆ハウジングサービスのメリット・デメリット

では具体的に、自社内でサーバーを管理していた企業がハウジングサービスを利用した場合、どのようなメリットやデメリットが生じるのでしょうか。

メリット① BCP対策

ハウジング事業者の多くは、大規模地震や津波の被害を想定し、データセンターを災害に強い立地に建てたり、建物自体を免震構造にしていたり、非常用電源を完備していたりと、サーバーに被害が及ばないよう万全の対策を施しています。天災や事故などで自社が営業不能に陥った場合にも、ハウジングサービスを導入していれば、システムが関わる業務をテレワークに移行したり、別拠点に移したりすることが可能になります。

メリット② 社内リソースの有効活用

ハウジングサービスによってサーバーを自社に設置する必要がなくなるため、社内にサーバー室などを設置する必要がなくなり、スペースを節約することができます。また、サーバーの保守管理に必要な設備も不要になるため、ランニングコストの削減も期待できます。

さらに、ハウジング事業者によってはサーバーの運用管理やバックアップを委託することもできるため、保守管理のためのエンジニアも少人数で済むようになり、人的リソースも節約することができます。

メリット③ 自由なサーバー設計

ハウジングサービスはあくまでもサーバーの「置き場所」を提供するサービスであるため、設置するサーバーのスペックは自由にカスタマイズすることが可能です。自社に設置されているサーバーの移設や複数サーバーの連携にも対応できるほか、ハウジング事業者によってはネット回線を自由に引き込むことができるため、通信速度の速い回線が必要なシステムやVPN化にも柔軟に対応できます。

デメリット①ホスティングサービスと比較するとコスト高

ハウジングサービスはホスティングサービスと比較すると、コストが高くなる傾向にあります。ホスティングサービスであれば月々数百円〜数千円という価格帯も存在しますが、ハウジングサービスの場合、安くても月々3万円程度のランニングコストが発生します。

デメリット②　保守管理の必要性

先述した通り、ハウジングサービスは自社のサーバーをデータセンターに配置するサービスであるため、基本的に保守管理の責任は自社にあります。ハウジング事業者によってはサーバー管理の一部を委託することも可能ですが、サーバーに障害が発生した際には自社からデータセンターへ担当者を派遣する必要があります。
このため、データセンターへのアクセス方法を事前に調べ、何かあった際に車などで向かうことができる距離であることを確かめておく必要があります。

◆ ハウジングサービス導入の際の注意点

ハウジングサービスを導入する際には、サーバーがどのように管理されているかを確認しましょう。事業者によってサーバーの管理方法は異なっているほか、問題が発生した際のサポートが受けられるかも重要なポイントです。
また、各ハウジングサービスのHPなどでSLA(Service Level Agreement)をチェックし、自社が必要とするサービスが保証されているかどうかを確認しておくとよいでしょう。

ハウジングサービスは、導入した場合には長期間の運用となることが多いため、コストとサービス内容のバランスを検証し、自社に最適なハウジングサービスを選択しましょう。

まとめ

ハウジングサービスとは、データセンターに自社のサーバーを預けるサービス
ハウジングサービスは主にBCP対策として注目を集めている
事前によく調べ、自社に最適なハウジングサービスを選択することが重要