自然災害が頻発する日本において、備えておきたい「BCP」。また昨今では、リモートワークの普及により、BCPの一部である「IT-BCP」の必要性も増しています。今回は、そんなBCPとIT-BCPの連携の重要性やIT-BCPの対応策などについて解説します。

BCP・IT-BCPの概要

まず最初にBCPおよびIT-BCPの概要を簡単に説明します。

BCPとは

BCP（事業継続計画）とは、自然災害やテロ攻撃などの緊急事態に備えて、企業が事業の継続および早期復旧の方法や手段などを、事前に取り決めておく計画のことです。

例えば、「自然災害発生時の対応フローを取りまとめる」「発災時に迅速な対応をするため、従業員全員にスマートフォンを貸与する」などがBCPに該当します。

BCPを策定しておくことで、事業活動の早期再開を実現し、市場や顧客からの信頼性向上、ひいては事業拡大・新規顧客獲得につながる可能性もあります。

IT-BCPとは

IT-BCPとは、BCPの一部であり、ITシステムに特化したBCPのことです。自然災害やサイバー攻撃などの緊急事態が発生した場合でも、ITシステムの運用を維持できる体制を整えることがIT-BCPの目的です。IT-BCPは、企業活動・ビジネスの多くをITに依存している現代において、ますますその重要性が増しています。

BCPとIT-BCPの連携の重要性

BCPとIT-BCPの有効性を高めるためには、両者を連携させることが不可欠です。なぜなら、IT-BCPはBCPの一部であり、それぞれを独立させてしまうと、緊急事態発生時に上手く機能しないリスクがあるためです。例えば、IT-BCPに則り、ネットワーク回線障害時に顧客管理システムを早期復旧できたとしても、そのシステムを「誰が」「どのように利用するか」についてもBCPで計画を定めておかなければ、ビジネスの回復にはつながりません。BCPとIT-BCPは連携させてこそ、十分に機能するものだと認識しましょう。

BCP＋IT-BCPの4つの策定手順

BCPの策定手順について、連携が重要なIT-BCP特有のポイントと併せて解説します。

ステップ①：BCP策定の方針を決める
ステップ②：想定されるリスクを洗い出す
ステップ③：現況を把握し、BCPの計画を立てる
ステップ④：ハード面・ソフト面ごとの具体策を立てる

順に見ていきましょう。

ステップ①：BCP策定の方針を決める

最初に自社の経営方針のほか、どのような緊急事態が発生しうるか、また被害はどの程度拡大しそうかなどを調査・分析した上で、BCPの方針を決定します。BCPの方針には例えば、「顧客からの信頼を守る」「従業員の雇用を確保する」などが挙げられます。

＜ステップ①におけるIT-BCP特有のポイント＞
IT-BCPの方針や対象とする範囲を決める。また、各部門における役割分担も明確にする。

ステップ②：想定されるリスクを洗い出す

次に、自然災害や感染病、サイバー攻撃など、緊急事態毎に起こり得るリスクを具体的に洗い出します。また緊急事態発生時にすべての事業を一斉に復旧させることは現実的ではありません。そのため、洗い出したリスクに優先順位をつけ、自社の中核事業を特定しておきましょう。

＜ステップ②におけるIT-BCP特有のポイント＞
リスクの洗い出しに加え、復旧させるシステムの優先順位も定める。

ステップ③：現況を把握し、BCPの計画を立てる

続いて、現在の自社の管理体制やリソースなどを確認します。そして、把握できた現況およびステップ②で洗い出したリスクを踏まえて、BCPの具体的な計画を立てましょう。計画には、緊急事態によって被害を受けた場合の代替・復旧計画を中核事業から順に記載していきます。

＜ステップ③におけるIT-BCP特有のポイント＞
現状のシステム対策について確認した上で、代替システムの選定もBCPの計画に組み込む。

ステップ④：ハード面・ソフト面ごとの具体策を立てる

最後に、BCP計画に沿って、緊急事態発生時に向けた、ハード面・ソフト面の具体策を策定します。両者の具体策例は以下のとおりです。

ハード面の具体策例	ソフト面の具体策例
施設の耐震強化	避難計画の作成
代替要員の確保	従業員連絡リストの作成
資金調達の確保	BCPの従業員教育の実施
防災対応用品の充実	インシデント発生時の対応フローの作成

なお、具体策を立て、実際に実行することで、取引先からの信用力向上も見込まれます。

＜ステップ④におけるIT-BCP特有のポイント＞
「情報の電子化」や「業務のクラウド化」などがIT-BCPのハード面・ソフト面の具体策例にあたる。

IT-BCPの具体的な4つの対応策

続いて、IT-BCPの具体的な対応策を4つ紹介します。

ITシステムの管理体制の構築

緊急事態時に気を付けたいのが、犯罪です。例えば、従業員もしくは外部者より不正アクセスが行われるかもしれません。そのため、システム別に「誰が」「どのように利用できるのか」を明確にする管理体制を構築することが大切です。そのほか、定期的にアクセス権限を更新したり、平時からログを取っておくなどの対策も検討しましょう。

電力の確保

緊急事態発生時には、どの程度の時間、どれくらいの範囲で停電が続くのか、判断がつかないケースが多々あります。停電が起きると、システムダウンやデータの消失、事業の停止などのリスクが高まるため、電力の確保はIT-BCPだけでなくBCPにおいても重要です。

なお、停電時には限られた電力での事業活動が強いられるため、省電力で稼働できる電子機器を導入しておくと良いでしょう。

情報の電子化

紙資料の保存性は決して高くありません。例えば火災発生時には、紙文書の破損・紛失のリスクが高まります。情報の破損・紛失は対外的な信用を失うほか、復旧の遅れにもつながりかねません。そのため、とくに自社の重要情報は電子化して保護することが大切です。必要に応じて、電子文書管理システムの活用を検討しましょう。

情報管理のクラウド化

オンプレミスで情報を管理している企業の場合、緊急事態発生時にはサーバーが停止してしまうリスクが高くなります。そのため、早期の事業再開・事業継続のためには、情報管理をクラウドへ移行することが重要です。クラウド化により、データの分散保管やバックアップの自動化がなされるため、いざというときにもすぐに情報へアクセスできるようになります。

IT-BCPに有効なハイパーのソリューション

IT-BCPの具体的な対応策として、電力の確保や情報の電子化などを紹介しました。ハイパーではそれらの対応策に応えるソリューションを提供しています。

例えば、自社の使用状況に応じて最適なプランと複合機・プリンターを選択できる「エプソンのスマートチャージ」では、緊急事態発生時の限られた電源環境においても負荷をかけることなく稼働できるプリンター「LXシリーズ」を利用できます。また、読み取ったデータの自動仕分け・転送を行うソフトウェア「Document Capture Pro」を使えば、紙文書の電子化業務を効率的に進めることが可能です。

なお、IT-BCP対策に関心がある担当者は環境コンサルティングサービス「EPSONスマートチャージ」｜HYPER VOiCEをぜひチェックしてください。

まとめ

有効性を高めるために、BCPとIT-BCPの連携が重要
IT-BCPの具体的な対応策として、「電力の確保」「情報の電子化」などが挙げられる
IT-BCPでは、省電力で稼働できるプリンターやデータの自動仕分け・転送をするソフトウェアの活用も有効