ここ数年で当たり前のものとなったテレワークは、多様な働き方の推進には欠かせない施策です。しかし、その反面でいくつかのデメリットも指摘されています。そのうちの一つが、テレワーク下におけるメンタルの問題。そこで今回は、人事や総務担当が抑えておきたいメンタルヘルス対応を確認しておきましょう。

テレワーク下で注意すべきメンタル問題

コロナ禍が長引く今、テレワークによってメンタルの不調を起こす人が発生するなど、「テレワークうつ」という言葉が新聞をはじめとしたメディアで見られるようになりました。その原因として挙げられるのは、コミュニケーションが不足になること、オンオフの切り替えが難しく家にいてもくつろげなくなること、働き過ぎてしまうことなどにあるようです。

三菱UFJリサーチ＆コンサルティングが令和3年3月に実施した「テレワークの労務管理等に関する実態調査」で、従業員が「デメリットとして感じること」の上位には、以下のようなものがありました。

同僚は部下とのコミュニケーションがとりにくい
上司とのコミュニケーションがとりにくい
在宅勤務で可能な業務が限られる
OA機器（モニター、プリンタなど）が揃っていない
仕事と仕事以外の切り分けが難しい

ただ、テレワークが必ずしもメンタルに悪影響があるわけではなく、テレワークによってメンタルヘルスでの不調を訴える従業員が減少傾向にあるという企業もあります。上記調査では「メリットと感じること」の上位が以下のようになりました。

通勤時間を節約することができる
通勤による心身の負担が少ない
隙間時間などを有効活用することができる
急な仕事の依頼や余計な会話が減って、担当している業務に集中できる
リラックスした空間で仕事ができる

テレワーク下でのデメリットの対策を行えば、メンタルヘルスはむしろ向上することが望めるとも言えます。

テレワーク下で必要なメンタル対策

厚生労働省が運用する「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト　こころの耳」には、テレワークに特化したメンタルヘルス対策の情報が掲載されています。このページによると、メンタルヘルス対策において大切なのは、以下の3つの予防を行うことであるようです。

一次予防：ストレスチェック制度の活用や職場環境等の改善を通じてメンタルヘルス不調を未然に防止する
二次予防：メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な措置を行う
三次予防：メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰の支援等を行う

一次予防

メンタルヘルスの不調を未然に防止するためにある一次予防は、アンケートやヒアリングの実施で従業員が不調のサインを出していないかをチェックするものです。また、その結果を分析し、ストレスの原因になっていることを見つけ出して、それに合った対策も行いましょう。

また、管理職や人事、総務と連絡が取りやすいシステムを設けて、連絡を密にとることも必要です。

「メンタルの不調を訴えることで評価が落ちるのではないか」という心配を抱かせないようにするためには、相談ができるような部門を別途設けたり、相談するとマイナス評価を受けることにはならないと明示したりしておくのも良いかもしれません。

二次予防

不調の早期発見を行う二次予防は、労働時間が増えていないか、体調に変化はないかなどのチェックシートを作成し、従業員本人に気付きをもたらします。管理職などとの定期オンライン面談も効果が見込めるでしょう。

規模の大きい企業では、産業保健スタッフが全従業員に対して面談を実施しているところもあるようです。

三次予防

メンタルヘルスが不調となって休職してしまった従業員には、復帰に向けた支援が必要です。円滑な復帰と就業持続のために産業医などの助言を受け、職場復帰支援プログラムを策定することが求められます。これはテレワークであってもオフィスワークであっても同様です。

テレワークの場合は、復帰に向けての支援や面談もオンラインで行うケースが多くなります。面接の頻度を増やすなどして、対面での支援と同等の評価・判断が行えるようにするのが良いでしょう。また、従業員の状態によって柔軟に対応できるよう、オンラインでは判断しにくい場合には対面にすぐ切り替えられるようにしておくことが理想です。

必要なテレワーク環境の整備

コミュニケーション不足が原因で不調を引き起こしている場合には、オンラインミーティングや雑談の機会を設けることで問題が解決することもあります。チャットツールやグループウェアを取り入れ、活用するのも一つの手段です。

また、自宅の環境などの理由でストレスがたまっている場合には、サテライトオフィスやコワーキングスペースの利用を認めるなどの方法をとりましょう。

テレワーク独特のストレスが軽減できれば、オフィスワークよりも快適な業務遂行が実現するかもしれません。

参考：テレワークでのメンタルヘルス対策について
https://kokoro.mhlw.go.jp/telework/

まとめ

・最近、テレワーク下でのメンタルヘルスが問題になっている
・原因としては、挙げられるのはコミュニケーション不足など
・可能な限り、早い段階でのメンタルヘルス対策が重要