トラックドライバーの時間外労働時間が2024年4月から年間960時間に規制され、年間の拘束時間が3300時間に見直されます。労働時間が短くなることに伴い、輸送能力が低下することが懸念されています。2024年問題をDXで解決できないのか、その方法を探ってみましょう。

2024年問題とは

働き方改革関連法（働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律）により、時間外労働の上限規制、年次有給休暇の取得義務化、同一労働同一賃金の徹底が定められました。大企業は2019年4月、中小企業は2020年4月からすでに適用になっていますが、運送業については2024年4月までの猶予期間が設けられていました。

2024年の4月からは、「自動車運転業務における時間外労働時間の上限規制」が適用になり、時間外労働時間が年間960時間に定められ、年間拘束時間も3300時間に短縮されます。これまでは、時間外労働に関する規則はなく、年間拘束時間も3516時間でしたので、200時間以上減ることになります。

労働基準法で定められていることなので、もし違反をすると６カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。

物流・運送業界をとりまく状況

運送業界では現在、人材不足に悩まされている状況です。それが表れているのが有効求人倍率。2023年4月の全業種の有効求人倍率が1.13倍だったのに対して、貨物自動車運転者は2.11倍にも及んでいます。さらに、全業種と比較して運送業は平均年齢が高く、上昇幅も大きいことが指摘されています。

人が足りていない状況を生み出しているのは長時間労働、低賃金という条件の悪さにも起因しているため、労働時間の削減は正しい施策です。

とはいえ、人材が足りていないうえに、一人当たりの労働時間が減るため、輸送能力が不足して、今までどおりに物が運べなくなる可能性があります。この懸念は「物流の2024年問題」と言われています。

2024年問題への対策が何も行われなかった場合、営業用のトラックは2024年に14.2％の輸送能力が不足し、2030年には34.1%不足するかもしれないという試算があります。

そうなると、宅配サービスが欲しいときに手に入らない、新鮮な海産物や青果の入手が難しくなる、配送に時間がかかるなどの心配が出てきます。

対策として、まず、トラック事業者は働きやすい環境をつくり、人材を集めなければなりません。一般の荷主は再配達を減らすように心掛ける、通販ならできるだけまとめ買いをするなどの工夫が必要です。

さらに、物流・運送の作業にかかる時間を減らすべく、デジタル化を考えていくことも大切です。

物流・運送業のDXを推進するには

従業員にかかる負担を減らし、効率よく仕事を回すために、どんなデジタルツールが用いられているのでしょうか。

労務管理

働く環境を整えるために、労務管理システムを導入した企業があります。手作業で行っていると、労働時間が守られていなかったり、人的ミスが起こったりします。スマートフォンやドライブレコーダーと連携する労務管理システムを利用すれば、正確な運行状況や勤怠を行えるため、働きすぎているドライバーには休ませるなどの対応ができます。

導入した企業では、運転手が適切な時間で運行できるようになり、交通事故の低減にもつながったといいます。また、管理側でドライバーの待機時間が把握でき、荷主への改善依頼にもつながっています。

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配車管理

それまで電話でドライバーのやり取りをしながら配車を管理していた企業が、配車管理システムを導入することで管理側とドライバーの双方ともに効率を上げています。請求や支払い管理、運転日報などの情報も一元管理できるシステムもあります。

AI点呼ロボット

管理者は、ドライバーに対して本人確認、アルコールチェック、免許証確認、体調管理などの点呼が義務化されています。これをAIロボットが実施する方法も取り入れられています。

車両の運行確認

GPS端末を車両に装着し、リアルタイムでトラックがどこにいるかを把握でき、生産性向上とコスト削減につなげています。

ドローン活用

買い物に行くのに片道40分かかるような過疎地や、高齢者が多く買い物に困難を覚える人向けに、ドローンによる配送サービスも始まっています。まだごく一部での導入ですが、いずれ拡大していく可能性もあります。
また、敷地内限定で無人運転によるトラック搬送も行われています。

倉庫管理

物流に欠かせない倉庫管理もデジタル化が進みつつあります。
契約業務にかかる時間やコストは電子契約で低減させ、RFIDタグにより入出庫管理、自動仕分けなどを行い、事務員の業務負担を減らします。
身体に負担の大きい荷下ろしにはロボットが用いられています。

まとめ

・2024年4月からトラックドライバーの労働時間の上限が厳しくなる

・運送業界は人材不足、高齢化が問題になっている

・流通を止めないために、物流・運送業界でもDXが推進されている