内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)は2023年9月25日に、「サイバーセキュリティ関係法令Q&Aハンドブック（以下、ハンドブック）」の「Ver2.0」を公開しました。このハンドブックは2020年3月に公開された初版を改定したもので、サイバーセキュリティに関連する法令をQ&Aの形式で解説しています。

どんな内容が解説されているのか

このハンドブックには、企業において普段から実施すべきサイバーセキュリティ対策、インシデント発生時の対応に関する法令上の事項、情報の取扱いに関する法令などが掲載されています。

ハンドブックで取り扱っている主なトピックスには次のようなものがあります。

● サイバーセキュリティ基本法関連
● 会社法関連（内部統制システム等）
● インシデント対応関連総論（当局等対応、関係者対応）
● 個人情報保護法関連
● 不正競争防止法関連
● 労働法関連（秘密保持・競業避止等）
● 情報通信ネットワーク関連（IoT関連等を含む）
● 契約関連（電子署名、システム開発、クラウド等）
● 資格等（情報処理安全確保支援士等）
● その他各論（リバースエンジニアリング、暗号、情報共有、脅威インテリジェンス、データ消去等）}
● インシデント対応関連（事後的対応等）（ランサムウェア対応、デジタル・フォレンジック、サイバー保険等を含む）
● 民事訴訟手続
● 刑事法（サイバー犯罪等）
● 海外法令（GDPR等）

このリストからもわかるように、ハンドブックに掲載されている内容は多岐に渡っています。業種・業態を問わず企業の情報システム部門を始め、法務部門、経営部門、さらには営業、人事、総務にも関連する内容が沢山含まれているのです。

技術の進歩に伴って改定が実施された

今回公表されたVer2.0では、サイバーセキュリティを取り巻く環境変化、関係法令・ガイドライン等の成立・改正によって企業の課題となっている「インシデント対応」や「ランサムウェア対応」などのトピックを大幅に加筆しています。

Ver2.0で追記されたトピックスは次の通りです。

● サイバーセキュリティインシデント発生時の当局等対応
● インシデントレスポンスと関係者への対応
● 5G促進法（特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律）
● ドローンとサイバーセキュリティ
● 重要インフラ分野における規律
● モビリティとサイバーセキュリティ
● DX認定・DX銘柄とサイバーセキュリティ
● サイバーセキュリティに関する規格等とNIST SP800シリーズ
● 認証/本人確認に関する法令について
● サイバーセキュリティ事業者への投資
● 脅威インテリジェンスサービス
● データの消去、データが記録された機器・電子媒体の廃棄
● ランサムウェア対応
● インシデント対応における費用負担及びサイバー保険
● 越境リモートアクセス
● 海外における主なサイバーセキュリティ法令
● 国際捜査共助・協力に関する条約・協定

初版のハンドブックのQ（問い）の数は73個でしたが、Ver2.0では14個増え87個に拡充されています。たとえば「重要インフラ分野における規律」（Q41）が新たに加わり、まず14の重要インフラ分野（情報通信、金融、航空、空港、鉄道、電力、ガス、政府・行政サービス、医療、水道、物流、化学、クレジット、石油）を解説した上で、金融と医療の2分野は特に機微性の高い個人情報を扱うインフラであるとしています。そのため、情報の安全管理、サイバーセキュリティ対策、インシデント対応、報告義務などについても詳細な記述が追加されています。

その他にも5G促進法、ドローン、モビリティ、DX認定・DX銘柄に関係するものや、海外における主なサイバーセキュリティ法令などが追記されています。

ハンドブックは情シスや法務だけのものではない

サイバーセキュリティ関係法令という少し堅いイメージのあるハンドブックであるため、「サイバーセキュリティなら情報システム部門」や「法律関係なら法務部門」といった思い込みをしている人も少なくありません。

しかし、実際には労働基準法など人事や労務に欠かせない情報についても触れていますし、マイナンバーカードの取り扱いなど総務部門にも関連する内容も含まれています。

著作権法などは商品開発の部門にとって重要ですし、電子契約や輸出入に関連する法律であれば営業部門であっても知らないままではいられません。もちろん不正競争防止法など経営層にとっても欠かすことのできない内容も解説されています。

このハンドブックは、NISCのサイバーセキュリティ・ポータルサイトから誰でもダウンロード可能です。

サイバーセキュリティ・ポータルサイト（関係法令Q＆Aハンドブック）|NISC
https://security-portal.nisc.go.jp/guidance/law_handbook.html

なお、この・ポータルサイトでは、サイバーセキュリティに関する正しい知識を身に付けることを目的とした「インターネットの安全・安心ハンドブック」もダウンロード可能です。普段サイバーセキュリティを意識しない方向けの資料として、企業におけるセキュリティ教育などに活用することをおすすめします。

サイバーセキュリティ・ポータルサイト（インターネットの安全・安心ハンドブック）|NISC
https://security-portal.nisc.go.jp/guidance/handbook.html

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詳細はこちら：https://www.securitier.jp/security/ciso/cisocs/

まとめ

・NISCは2023年9月にサイバーセキュリティ関係法令Q&AハンドブックのVer2.0を公開
・技術の進歩に伴って重要インフラ、5G、ドローンなどに関連内容を大幅加筆
・ハンドブックには情報システム部門や法務部門以外にも関連する情報が沢山含まれている