DX (デジタルトランスフォーメーション) を進めたいと思っていても、「何から始めてよいか分からない」「大掛かりなシステム導入は予算的に無理」といった課題を抱えている企業は少なくありません。

しかし、そうした悩みを抱える企業を中心に、最近注目されているのが「生成AI×ノーコード/ローコードツール」を活用したスモールスタートのDXです。この組み合わせを実現することで、専門的なITスキルがなくても業務の一部を自動化・効率化できる環境が整いつつあります。

そこで今回は、生成AIとノーコード/ローコードツールによるDXのメリットや事例、始め方、導入時の注意点などを解説します。

DXを難しく考えすぎない

DXを推進するには、ITスキルの高い人材や予算が沢山必要だと考える人は多いかと思います。確かに大規模なＤＸプロジェクトを推進するには、人、時間、予算が必要なことは間違いありません。しかし、ＤＸの推進はそのような大規模なものばかりではありません。

そもそもDXとは、デジタル技術を活用して生産性を上げ、ビジネスに新たな価値を創造したりすることを意味しています。それだけを聞けば難しそうな印象を受けますが、「デジタルツールを利用して非効率な作業を改善する」といった小さな課題解決の取り組みも立派なDXです。

小さな取り組みであれば、短期間で成功することが可能です。現場レベルの小さな取り組みでも、成功体験を重ねることで社内の空気は必然的に変わっていきます。たとえば「書類をデジタル化してハンコをなくそう」「経費精算を楽にしよう」「社員に貸し出しているデバイスの管理を効率化しよう」など現場レベルの課題を少しずつデジタルで改善していくアプローチは、規模の小さな企業でも無理なく実現できる現実解だと言えるでしょう。

生成AIによって大きく変わったノーコード/ローコードツール

プログラミング不要で業務アプリや業務フローを構築できるノーコードツールは、気軽に自分たちの業務を効率化したい多くの企業で支持されています。また、必要に応じて少量のコードを記述することで、ノーコードツールよりも柔軟性の高い業務アプリを構築できるローコードツールも同じく注目されています。

そして、最近ではノーコード/ローコードツールと生成AIを組み合わせることで、適用業務範囲が広くなり、アプリや業務フローの構築がより容易になるというメリットが注目されています。

生成AIは「考える」役割を担い、文書作成、要約、アイデア出し、データ処理などを自然言語で実行します。一方のノーコード/ローコードツールは、「動かす(実行する)」ことが担当で、アプリや業務フローをGUI操作で構築・運用します。

この2つを組み合わせると、「思いついたことを即座にカタチにできる」環境が整います。ノーコード/ローコードツールは、条件分岐や入力管理はできても、文脈理解や創造的な処理はあまり得意ではありません。しかし、「要約する」「自然な文を作る」「分類する」といった知的作業を補完できる生成AIを組み込むことで、単純な自動化を超えて高度な判断・応答の自動化を実現できるようになります。

たとえば「問い合わせ内容に応じて返信文を自動生成し、チャットツールに通知する」など、以前は開発者が必要だった処理も今では非エンジニアが簡単に実装できるようになっています。

より高度な処理を実現するためにコードを記述しなければならないローコードツールを利用する場合でも、生成AIに実装したい処理を問い合わせれば、AIが自動的にコードを生成してくれます。また、ツールへの組み込み方や詳細な設定方法なども生成AIが教えてくれるので安心です。

主なノーコード/ローコードツールと生成AI

ノーコード/ローコードツールといっても、その範囲や性質は多岐に渡っています。以下にいくつかの例を挙げていますが、これらはほんの一部に過ぎません。

主なノーコードツール

・Notion（情報管理）

・Airtable（データベース管理）

・Kintone（業務アプリ構築）

・Adalo（業務アプリ構築）

・Zapier（自動連携）

・Make（自動連携）

主なローコードツール

・Microsoft Power Platform（Power Apps、Power Automate）

・AppSheet（Google系のローコードツール）

・CELF（SCSKが提供する国産ツール）

・ASTERIA Warp (ASTERIAが提供する国産ツール)

・OutSystems

また、これらのツールと組み合わせる主な生成AIも、いくつか例を挙げます。

主な生成AI

・ChatGPT

・Microsoft Copilot

・Google Gemini

・Claude

組み合わせ事例

実際にノーコード/ローコードツールと組み合わせた事例をいくつか挙げてみます。

例1：問い合わせ対応の自動化（社外対応）

使用ツール：

・Googleフォーム

・Airtable

・ChatGPT

・Slack

流れ：

1. 顧客がフォームから問い合わせ

2. 内容がAirtableに自動記録

3. ChatGPTが問い合わせ内容を要約＆返信案を生成

4. 担当者がSlack通知で確認し、必要に応じて編集して返信

例2：営業活動の自動化（リマインド＋要約）

使用ツール：

・Googleカレンダー

・Whisper

・ChatGPT

・Make

・Notion

流れ：

1. 営業担当がモバイルで音声メモを記録

2. Whisperで音声を認識し、ChatGPTで要約

3. 次回フォローをMakeが自動でセット

4. 情報をNotionに整理

例3：営業日報の自動要約・要素抽出

使用ツール：

・Power Apps

・Microsoft Copilot

・SharePoint

・Power BI

流れ：

1. 営業担当は Power Apps 上のフォームに訪問内容を入力

2. 入力された自由記述欄をMicrosoft Copilot（GPT）が読み取り、要点抽出（商談の結果、課題、次回アクション）

3. カテゴリ分類（製品種別、業界別）

4. 要約データを SharePoint に格納し、Power BIで可視化

例4：問い合わせメールのカテゴリ自動分類

使用ツール：

・CELF

・Azure OpenAI

流れ：

1. CELFで問い合わせメールの管理アプリを作成。

2. 新規メールが届くと、Azure OpenAI（GPT）を呼び出し、「PCトラブル」「ネットワーク」「ライセンス申請」などのカテゴリを自動判定。

3. 判定されたカテゴリごとに、担当部署へ自動振り分け。

例5：フォーム解答の自動要約

使用ツール：

・Googleフォーム

・Google Gemini

・Googleスプレッドシート

・AppSheet

・Apps Script

流れ：

1. Googleフォームに回答されると、Apps ScriptがGemini Pro API を呼び出す。

2. Geminiが自由記述の内容を要約し、優先度やカテゴリで分類する。

3. Geminiが出力した分類結果、要約をスプレッドシートに格納

4. スプレッドシートをデータソースに、AppSheetが問い合わせ管理アプリとして可視化

業務の効率化はできるが生成AIの利用には注意も必要

組み合わせの例からもわかるように、ノーコード/ローコードツールと生成AIの組み合わせは、現場レベルでさまざまな業務の効率化を実現します。慣れないうちは少し戸惑うかもしれませんが、分からないことはAIに質問すれば、AIが詳細にやり方を回答してくれます。身近な業務から「AIや自動化が使える場面はないか？」と考えてみることで、これまで数時間かかっていた作業が数分で済むようになるかもしれません。こうした成功体験が、DXへの第一歩になるはずです。

ただし、生成AIの回答は、すべてが正しいとは限りません。そのため、「実際に人が確認する」というプロセスをどこかに入れる必要があります。また、顧客や取引先にAIが自動で応答するような仕組みを構築した場合には、AIによる自動応答である旨を明記することを推奨します。

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このように4つの生成AIはそれぞれ得意分野が異なります。ただ、得意分野の生成AIを都度使い分けるのは大変です。さらに有料プランを利用するとなると、ユーザー数に応じて一定の金額がかかります。そこでハイパーがおすすめするのが、法人向け生成AIサービス「ナレフルチャット」です。ナレフルチャットでは先に紹介したChatGPT、Claude、Grock、Gemini、Perplexity含む最新の生成AIモデルを利用できます。また料金についても、月額4万円（税別）で利用人数は無制限です。利用者数が多いほどお得なサービスと言えるでしょう。そのほか、入力データが学習データとして利用されることがないため、セキュリティ面も安心です。生成AI利用による情報漏えいが不安な企業も安心して導入することができるでしょう。

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まとめ

DXは小さくはじめることもできる
ノーコード/ローコードツールと生成AIの組み合わせは小さいDXに最適
生成AIは常に正しい回答をするとは限らないので人のチェックが大切