AIの急速な進化により、今後の労働市場がどう変化していくのか気になるところです。2024年７月に内閣府が発表した白書を中心に、自分の仕事内容はどう変わるのか、今後何を身につけていけばいいのかを考えてみましょう。

AIは仕事を代替／補完する

内閣府が毎年発行している経済白書「世界の潮流」の2024年版はサブタイトルが「AIで変わる労働市場」とあり、AIがどのように仕事を変えるかが説明されています。

この白書で、『AI（Artificial Intelligence）は、広義には「予測装置」と定義付けられる』（P3）と述べられています。それはどういうことかというと、従来の技術と違い、AIを利用した技術は広範囲・多様な作業に対応できる可能性があるからです。

2022年11月に公開されたChat-GPTはじめ生成AIは、ほかのAIとは性質を異とし、文章や画像、音楽の生成のみならず、アプリケーションやシステムの連携でロボットの操作といった物理的な作業も可能になるといわれています。

従来、人が行っていた作業は将来、AIが担えるようになるという研究結果もあり、現在の労働内容はいずれAIに代替または補完されるようになると予測されています。

代替は、人の職業やタスクを完全にAIに置き換わり、人が介在しなくなることをいい、補完は人の労働を補助して生産性を上げ、人は余剰時間で新たな仕事を行えるようになることをいいます。

例えば、事務的な業務は手作業で行っていた時代から、PCやインターネットの発達で大きく変わりました。PCのおかげで電卓をはじかなくても計算ができ、さらに、SaaSアプリのおかげで、金額を入力してボタンをクリックするだけで、自動で仕訳できるようになっています。

今後、AIを適切に使用すれば、もっと効率化し、ほぼ完全な自動化の実現まで見えてきています。こういった業務は代替型と考えられます。

補完型では、翻訳、医療画像解析、判例検索などでAIが人のタスクを助けられるようになりました。

自動化できる範囲は今後さらに広がると見られますが、医師や弁護士、裁判官といった職種は、社会的、人道的に利害が大きい判断を伴うため、完全にAIに置き換わることはないでしょう。そのため、こういった内容は補完に留まる可能性が高いといえます。

AIが代替／補完するとされる職業

今後AIが代替する可能性が高いとされる職業は、事務的タスクのシェアが大きいもの、逆に影響が小さい職業は物理的タスクのシェアが大きいものとされます。

また、事務的タスクのシェアが大きくても、意思決定の重要性が高く、AI任せにはできない職業は補完する可能性が高いとみなされます。

それぞれ、10位までに入る職業は以下のとおりです。

職業、タスクごとにAIに代替される可能性を見ていくと、女性のほうがその職に就いている割合が高いといいます。また、教育水準が高いほど補完性の高い職業に就いている傾向があります。

AIにとってかわられる可能性が高いからと転職しても、同様のタスク内容の職場では結局同じことになります。

日本では、少子高齢化で生産年齢人口の減少が問題になっており、その減少分をうまくAIが補えればいいのですが、事務職だった人がいきなり消防員になれるわけではありません。

社会全体でAIをバランスよく利活用するには、労働者全体でAIリテラシーを身に付ける必要があります。これは、AI開発をするスキルではなく、AIの理解、活用、監視、批判的な考察できることを指します。

そのために、各国で、官民と大学などの協力で、リスキリングの取組みが進められています。

日本では、国や地方自治体、民間企業が一体となり、リスキリングに取組む「日本リスキリングコンソーシアム」も立ち上がっています。
https://japan-reskilling-consortium.jp/

AIは、課題を与えられれば解決のために調査や検討を行えます。「このような作業を自動化したい」といった指示があれば、いずれは人がプログラミングに携わらなくても新たなアプリケーションを作れるようになるかもしれません。

しかしながら、解決すべき課題や目標を定めることはAI自身ができることはありません。自動化できることはAIに任せて、その上位工程を担えるようになることが大切です。

AIの利用で起こり得るリスクとは？
https://hypervoice.jp/generativeairisk