多くの企業がペーパーレス化を推進し、データのやり取りが多くなってきた近年。最もよく使われるデータ形式が、PDFです。紙の書類をPDFにするにもさまざまな方法があり、どの方法を取るべきか悩むこともあるのではないでしょうか。そこで今回は、大量の書類をPDF化する代表的な4つの方法を比較します。自社の状況に最適な方法を見つけて、スムーズなペーパーレス化を目指しましょう。

書類をPDF化する必要性とは？

データの形式にはさまざまな種類がありますが、その中でもなぜPDFを選ぶ必要があるのでしょうか。

PDF最大の特徴は、機種やOSに関係なく、どのデバイスでも読み取れるという点にあります。さらにファイルサイズが小さく通信しやすい、パスワードなどが設定できるためセキュリティ性が高い、文書ファイルなので文字を検索できる、といったほかのデータ形式にはない有用性があるため、PDFは書類の電子化において普遍的なファイル形式となっているのです。

では、紙の書類をPDF化する意義は何にあるのでしょうか。まず、コストの削減が挙げられます。オフィスにおける経費の中でも、印刷コストは特に高いものの一つと言われています。印刷機そのものの導入コストはもちろん、インクやトナーなど消耗品の費用も無視できません。冊子を作成する際などは委託費も必要です。

郵送の際の送料や廃棄処分の費用もかかり、書類のバインディング、搬入・搬出といった時間的コスト、オフィスの一部を保管場所にしなければならない空間的コストなども発生します。しかし、こういったコストのほとんどは、書類をデータ化することで大きく削減可能です。
　
次に、日常業務の効率化につながるという点が挙げられます。データ化した書類は検索性が高く、必要な書類を簡単に見つけることができるようになります。データをクラウドサーバーなどで管理すれば、テレワークの際にも簡単に書類を確認でき、書類の受け渡しもメールで完結可能です。また、紙の書類は経年劣化したり、紛失したりする可能性もありますが、データであれば定期的にバックアップすることでそれを防止することができます。
　
さらにSDGsが代表されるように、現代の企業は環境問題への対応も求められています。紙媒体の使用を止めることで、SDGsの17のゴールの中でも「12.つくる責任つかう責任」「13.気候変動に具体的な対策を」「15.陸の豊かさも守ろう」などに貢献できるのです。

書類をPDFにする方法4選

紙の書類をPDFに変換するには、どのような方法があるのでしょうか。代表的な4つの方法を比較していきましょう。

複合機のスキャン機能を利用する
複合機に搭載されているスキャン機能を活用する方法です。オフィスに複合機が設置されている場合は、すぐにPDF化を始めることができます。設定次第ではFAXをそのままPDF化して受け取ることも可能ですし、機種によってはクラウドと連携し、スムーズにデータを保存することもできます。

デメリットは、書類の量によっては時間がかかるほか、複合機の機種によってはPDF化に対応していないことでしょう。また、クラウドと連携できない機種の場合は、スキャンデータの移動や整理といった作業も発生してしまいます。

カメラで撮影する
主にスマートフォンのカメラで書類を撮影してPDF化する方法です。複合機以上に気軽に導入でき、専用アプリが多数あるためPDF化したい書類に合わせてカスタマイズ可能という点が魅力です。また、クラウドとも簡単に連携できます。

デメリットとしては、書類の量によっては複合機以上に手間が必要であることが挙げられます。さらに、スマートフォンの機種によっては画質が粗くなり、OCR（光学文字認識）の精度がPCに比べると低い点なども懸念点でしょう。

ドキュメントスキャナーを使用する
ドキュメントスキャナーとは、大量の書類のスキャンに特化したスキャナーです。一気に数十枚の書類をPDF化できるため、時間的コストが低く済みます。また、ドキュメントスキャナーの中でも「非破壊型」と言われる機種の場合、製本されている書類を裁断することなく、そのままスキャンすることが可能です。

ただ、新しく導入する場合は初期費用として1〜5万円程度のコストがかかります。

法人向けのスキャニングサービスを利用する
PDF化する書類が大量にある場合、法人向けのスキャニングサービスを利用すると、人的・時間的コストを大きく節約することができます。また、図面などの大判の書類や、経年劣化で破れやすくなっている書類などもPDF化することができます。さらに、サービスによってはスキャンデータの管理を依頼することも可能です。

デメリットとして挙げられるのは、1ページあたり5〜10円程度、図面や製本された書類など、形が特殊なものは150〜300円程度のコストがかかることでしょう。

書類を電子化する際の注意点

紙の書類を電子化して保存する場合、かならず定期的にバックアップする必要があります。システム障害などでクラウドにアクセスできなかったり、データが消えてしまったりする可能性があるためです。

また、新しくスキャンしたデータは画像として認識されているため、Acrobat DCなどのOCR(光学文字認識)機能を使用して文書ファイルに変換しておくと、内容の編集ができるようになり、検索もしやすくなるため便利です。

また、電子帳簿保存法の改正に伴って多くの書類が電子化できるようになりましたが、「事業用定期借地契約」、「企業担保権の設定又は変更を目的とする契約」など、一部の契約書は現在でも書面化が必須義務となっており、電子化することができません。

ペーパーレス化実現にあたり、最初こそ慣れないシステムに戸惑うかもしれませんが、長期的に見ればコストの削減、業務の効率化、SDGsへの貢献など多くのメリットがあります。書類の種類や量は企業によって大きく異なりますので、現状に応じて適切な方法を選択することが重要です。

まとめ

・書類のデータ化において、PDFは最適なフォーマットである
・企業はペーパーレスを導入することで各種コストを大きく削減することができる
・自社の状況に適した方法でペーパーレス化を推進することが重要