自社のIT資産は適切に管理しなければならないことはわかっていても、人員不足や昨今の情報システム部門の多忙からどうしても後回しになってしまう、という企業もあるかと思います。しかし、IT資産のライフサイクルを適切に管理することは、業務の効率化やセキュリティ対策にも直結しているためとても重要です。そこで今回は、IT資産のライフサイクルを適切に把握し、効率的に管理する方法について解説していきます。

IT資産ライフサイクル管理とは？

IT資産ライフサイクルとは、組織内で使用しているIT機器やシステムライセンスなどの「調達」から「廃棄」までのプロセスを帳簿やツールに記録し、管理することをいいます。適切にIT資産ライフサイクルを管理することで、調達計画の改善をしてコストを削減したり、ライセンスの不正利用を防止したりすることができます。

また、「廃棄」のプロセスも管理する点が特徴的です。不完全な廃棄による情報漏洩やコンプライアンス違反を防止し、セキュリティを強化することができます。

IT資産ライフサイクル管理の4ステップ

IT資産ライフサイクルを管理には、大きく分けて4つのステップがあります。各ステップの要点を理解しておくことで、効果的な管理が可能になります。

・調達

企業・部署にとって必要なIT資産を調査した上で、選定・購入します。リース・レンタル・サブスクリプションもここに含まれます。調達した日時、プロダクト番号、ライセンスの期限なども記録しておきましょう。

・導入

調達したIT資産を自社のシステムに合わせて設定し、社内に配置します。周辺機器との連結、ソフトウェアのインストール、データ移行、IDの付与などもここに含まれます。どのIT資産がどの部署・社員に渡ったのかを記録しておきます。

・運用

実際にIT資産が使用されている間、生産性やコストを継続的にモニタリングします。問題が発生すれば対応し、ライセンスが切れるものがあれば更新を行いましょう。PCのアップデートなどもここに含まれます。

・廃棄

IT資産が寿命を迎えたり、新しい機器に更新したりする際には確実にデータを消去しなければなりません。リースやレンタル機器はデータ消去を確実に行い、廃棄処分する機器は物理破壊・磁気破壊して情報漏洩を防ぎましょう。

なぜ今、IT資産ライフスタイル管理なのか？

近年、クラウドサービスやサブスクリプションが増加したことに加え、リモートワークが急速に普及しました。端末の社外持ち出しや社外ネットワークからシステムへアクセスする機会なども増え、IT資産の管理方法はどんどん複雑化しています。その結果、各企業でライセンスの不正利用やセキュリティ対策の不備が目立つようになりました。これらの課題を背景に、これまで以上に資産ライフサイクルの管理は重要視されるようになってきているのです。

たとえば、機器やシステムの寿命を正確に把握しておけば、適切なタイミングで最新危機に交換でき、常に万全の状態で業務を行うことができます。機器の更新作業の際も対象機器の数や設置場所が記録されていれば、最小限の人的・経済的コストで作業を行うことができます。

モバイル端末やIoT機器を導入している企業であれば、機器の所有者や置き場所を明確化しておくことで、紛失などのトラブルを防止することもできます。IT資産ライフサイクル管理を怠ってライセンスの有効期限を把握していなかったり古いIT機器を使いつづけていたりすると、故障や不具合によって業務が停止し、思わぬ損失が発生してしまうこともあります。

しかし、IT資産ライフサイクルの管理を徹底するためには、既存システムの管理だけではなく買い替え対象である製品の選定や新しい機器の設定、マニュアルの整備、ヘルプデスクの設置などが必要となります。そのため、IT資産ライフサイクルの重要性がわかっていても人手が足りずに導入に踏み切れない企業が多いのも事実です。

IT資産ライフサイクル管理を効果的に導入するには

人手が足りない企業であっても、IT資産ライフサイクル管理の重要性は変わりません。社内での対応が難しい場合は、外部のソリューションを上手く活用しましょう。

IT資産管理ツールを活用する

IT資産ライフサイクルを管理するためのツールを導入することで、ネットワークに接続されている機器の利用状況やライセンスの期限などを一元管理することができます。情報システム部門の負担を大きく減らすことができるほか、自社に合わせてツールを選択することもできます。

アウトソーシングを利用する

IT資産ライフサイクル管理をアウトソーシングに外注し、まとめてマネジメントを依頼するのも有効な手段です。アウトソーシングであれば、調達から廃棄までをすべて任せることができ、社内にヘルプデスクを設置する必要もありません。

IT資産ライフサイクルの管理を徹底することで、廃棄品からの情報漏洩やライセンスの不正利用をなくすことができ、企業の信頼を維持することにもつながります。また、進歩が早いITソリューションをタイミングよく更新していくことで、より効率的な業務が実現できます。「管理は万全にしている」と思っている方も、ぜひ一度、自社の資産ライフサイクル管理について見直してみてはいかがでしょうか。

まとめ

・資産の「調達」から「廃棄」までを記録することが、IT資産ライフサイクル管理である
・IT資産ライフサイクル管理は、4つのステップに分けて考えるとわかりやすい
・IT資産ライフサイクル管理は、セキュリティ対策と業務効率化を同時に実現できる