SDGsという言葉を、毎日のようにどこかで見聞きするようになりました。環境問題ばかりがクローズアップされているSDGsですが、本来はもっと広い範囲での問題解決を図り、持続していこうというものです。そして企業にとっては、新たなビジネスチャンスを創出するツールになるともいわれています。

日本が特に力を入れるべき課題

SDGs（持続可能な開発目標）は2015年の国連サミットで採択され、2030年までの達成を目指しており、今はちょうどその折り返し地点です。

SDGsの国際的な研究組織である「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」（SDSN）は、毎年各国のSDGs到達度合いを評価したレポート（Sustainable Development Report）を発表しています。

2022年度のレポートによると、日本のSDGs到達度は165カ国中18位。2020年の16位から1年ごとに1ランクずつ下がってきている、という状況です。17のゴールで日本が達成したものと、課題が残るものはどれに当たるのでしょうか。

12の「つくる責任つかう責任」では、電子機器の廃棄量とプラスチックごみの輸出量の多さ、13の「気候変動に具体的な対応を」では二酸化炭素排出量の多さが問題になっています。5の「ジェンダー平等を実現しよう」では、国会議員の男女比、賃金の男女格差が指摘されています。

12や13は、話題に上がることも多く、各企業で注力を注いでいる印象ですが、それでもまだ足りないと評価されているのです。

企業にとってのメリット

SDGsは、上記の通り単なる環境問題ではありません。世界全体が抱える、人権・社会・経済・環境の問題に、統合的に取り組んで持続させようとするものです。SDGsに取り組まない企業はこのような問題意識を持たない、と判断されるリスクを抱えてしまいます。

逆に、積極的にSDGsに取り組む企業はイメージアップと共に企業の存続基盤を盤石なものとするメリットがあり、さらには新たな市場を開拓するチャンスともなります。国連開発計画（UNDP）の試算によると、SDGsが達成されれば、2030年までに世界で年間12兆ドルの市場機会が生まれるようです。

さらに各国の投資家も、企業の投資判断にSDGsやESG（企業の長期的成長に重要な環境（E）・社会（S）・カバナンス（G）の３つの観点）を重視する動きになっています。

中小企業で取り組むべきこととは

少し古いデータですが、2018年に関東経済産業局、一般財団法人日本立地センターが中小企業500社を対象に行った「中小企業のSDGs認知度・実態等調査」では、SDGsの取り組みの課題について、「社会的な認知度が高まっていない」（46.0％）、「資金の不足」(39.0%)、「マンパワーの不足」(33.6%)、「何から取り組んでいいかわからない」(30.2%)などを挙げていました。

認知度についてはずいぶん改善されていると考えられますが、それ以外の課題は解決できていない企業も少なくはないでしょう。

何から手をつけてよいのか分からない、という企業には、GRI（グローバル・レポーティング・イニシアティブ）、国連グローバル・コンパクト、WBCSD（持続可能な開発のための経済人会議）の3団体が発表した、SDGsの指針として「SDGs COMPASS」が参考になります。

全体を5つのステップに分けて、以下のように進めてみるのも手段の一つです。

・Step1 SDGsを理解する
・Step2 優先課題を決定する
・Step3 目標を設定する
・Step4 経営へ統合する
・Step5 報告とコミュニケーションを行う

中小企業が取り組むべき課題・目標は業種によっても異なりますが、ここでは、日本で到達度が低い目標を例に挙げてご紹介します。

5 ジェンダー平等を実現しよう
出産・育児により、女性は長期で休暇を取得せざるを得ません。これが不利に働かないよう、就業規則を見直し、テレワークや時差出勤などの柔軟な働き方を取り入れていきましょう。

12 つくる責任つかう責任
製造業や流通なら、売れ残りの製品を廃棄せずリユースなどに活用します。それ以外の業種はユーザーとして、ゴミを減らしてリサイクルに出す、備品もリサイクル製品に変えるなどの工夫が考えられます。

13 気候変動に具体的な対策を／14 海の豊かさを守ろう／15 陸の豊かさも守ろう
過剰包装を見直し、プラスチック製品は堆肥化可能な素材のものを利用して、ペーパーレス化の促進などで対応していきましょう。排水設備の見直しも効果的です。

17 パートナーシップで目標を達成しよう
国内外を問わないオープンイノベーションの促進から、地域のイベントや清掃などへの参加まで、社外との連携を図りましょう。

中小企業の中には、SDGsはハードルの高い取り組みだと認識している企業があるかも知れません。しかし、SDGsに取り組むことによって得られるメリットは数多くあります。まずはSDGsを意識することから始めて、自社にできる範囲での取り組みをスタートさせましょう。

まとめ

・SDGsへの積極的な取り組みは、新たな市場を開拓するチャンスにもつながる
・SDGsの指針「SDGs COMPASS」を参考に、SDGsの取り組みを進めるのも手段の一つ。
・日本で到達度が低い目標を把握して、積極的に取り組みを行うことが求められている。