生成AIは日々進化し、プログラミングや情報収集、市場調査など、あらゆる場面で用いられるようになりました。AIで個人の好みや同行などを分析してパーソナライズした情報を提供するサービスなども行われています。

一方、サイバー攻撃にも生成AIが利用され、ハイパーパーソナライズされたメールでのフィッシング詐欺などが横行。どのような詐欺があり、どう対策するべきなのかを考えておきましょう。

マーケティングにおけるハイパーパーソナライズ

ECサイトで買い物をしたり、インターネットで何かを検索したりすると、その情報に紐づく広告が表示されることがよくあります。こういったリターゲティング（リマーケティング）広告は2010年頃から登場していますが、AIの進化により、パーソナライズはより細かく、正確に行われるようになりました。

最新の技術を用いた個別化（パーソナライズ）のことを、ハイパーパーソナライズまたは超パーソナライズ（hyper-personalised）といい、小売りやエンタテインメント、ヘルスケアなどさまざまな分野で用いられます。

従来のリターゲティングは、購入履歴や閲覧履歴に基づいていましたが、ハイパーパーソナライズでは、さらに、場所や時間帯、天候などより詳細なデータを利用し、利用者に合った情報を提供できるようになっているのです。

ハイパーパーソナライズされたフィッシング詐欺

個人に合った情報を届ける技術は、中にはうっとうしいと感じる人もいますが、一般的には利用者に利便性をもたらせるものです。けれども、この技術は高度なフィッシング詐欺を容易なものにもしています。

2025年1月にイギリスの経済紙The Financial Timesは、イギリスの保形会社Beazleyやアメリカのオンラインオークション＆マーケットプレイスeBayが、ハイパーパーソナライズ技術によるフィッシング詐欺の急増に警鐘を鳴らしている、と報じました。

個人に関する膨大な情報を収集し、的を絞った攻撃が増えてきているというのです。

AIボットが、企業や個人のライフスタイルや好みに関する大量データを迅速に取込んで、その特徴を分析するため、フィッシングメールは、それを目にした利用者の興味をひきやすい内容になっています。

その情報源は、オンラインでの行動やソーシャルメディアの投稿やフォローしているアカウント情報など。スマートフォンのGPSなどから、オフラインでの行動まで収集される可能性も否定できません。

以前のフィッシングメールは、文面に不自然な日本語が書かれているなど、見るからに怪しいものが多かったのですが、生成AIで外国の攻撃者でも自然な日本語でのメールを作成できるようになりました。

特定企業のサイトとそっくりな見た目で、かつメールアドレスも既存企業のドメインを偽装したりしているので、一見しただけではフィッシングメールであることを見抜くのは非常に難しくなってきています。

また、セキュリティツールでフィッシングメールをフィルタリングしようとしても、AIで作成されたメールはこれをすり抜けてきてしまうことがあります。

フィッシング対策協議会のデータによると、同協議会に届けられた2025年7月のフィッシング報告件数は、前月から33,563件増の226,433件でした。

詐欺に利用された主なブランドは、SBI証券、NTTドコモ、Apple、ANAなど。投資を行っている、飛行機によく乗るなどの履歴があると、このようなブランドを騙ったメールが届く可能性が増えるかもしれません。

手法に関しては、従来の方法なのか、ハイパーパーソナライズされたものなのか記載がありませんが、対策は同様です。

対策1：迷惑メールフィルターの利用。すり抜けてしまうこともありますが、ある程度は防げます。デフォルトで機能がオフになっている場合もあるので、確認しておきましょう。また、スマートフォンのSMS（ショートメッセージサービス）もフィルタリングしたほうが安全です。

対策2：Webフィルターの利用。Chrome、Safari、FirefoxにはGoogleセーフブラウジング、EdgeにはMicrosoft SmartScreenというWebフィルター機能があります。フィッシングサイトを閲覧しようとすると警告が表示されます。

対策3：よく利用するサイトはブックマーク。メールにサイトのURLが記載されていてもクリックせず、ブックマークから見るようにします。

対策4：パスワードマネジャーの利用。自動的にログインできないときは偽サイトの可能性があります。

対策5：ソフトウェアを最新の状態に更新。

対策6：メールアドレスやURLが正しいものであるかを確認。

対策7：送信ドメイン認証の利用。以下の3つの技術があります。

システム上で対策してもすり抜けてしまうことがあるということを忘れず、常に注意を払うことが大切です。

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