コロナ禍を機に多くの企業でテレワークが導入されていますが、このテレワークがSDGsの推進にも関係していることをご存知でしょうか。テレワークは感染防止の一時的な対策だけでなく、長期的に継続可能なビジネスを実現する上でも欠かせないアイデアなのです。そこで今回は、テレワークを導入してSDGsを推進していくことで、企業にはどのような影響があるのかを詳しく見ていきます。

SDGsにおけるテレワークの位置付け

「持続可能な開発目標」を意味するSDGsは2015年の国連サミットで採択され、以下の17の目標で構成されています。これらの目標は、2030年までに達成することを目指します。

17の目標のうち、主に5つの項目においてテレワークの導入が目標達成の推進につながると言われています。それぞれ見ていきましょう。

・3「すべての人に健康と福祉を」
テレワークは感染拡大防止に効果的なので、「健康的な生活の確保」に貢献することができます。

・8「働きがいも経済成長も」
さまざまな理由で出勤が困難な人でも、テレワークの導入によって業務に参加できるようになります。企業側は労働力を確保し、生産性向上につなげられるだけでなく、通勤にかかる交通費の必要がなくなるほか、スタッフの体力的消耗を防ぐこともできます。

・10「人や国の不平等をなくそう」
地域格差も、テレワークで解消できる可能性があります。たとえば、首都圏と地方では同じ仕事であっても賃金に大きな差があります。テレワークであれば居住地に関係なく就職することができるようになるため、よりフラットな労働条件での雇用が可能になります。

・11「住み続けられるまちづくりを」
テレワークの浸透によって通勤に伴う人々の移動が抑制されるため、通勤ラッシュや交通渋滞を緩和させ、地域の住みやすさを向上させることができます。

・13「気候変動に具体的な対策を」
通勤には電車やバス、マイカーが使用されていましたが、テレワークの浸透によってこれらの使用が減ることで、排気ガス量の削減・節電などにも効果があると言えます。家庭で消費される電力が増えるのでは、という意見もありますが、オフィスの電気使用量は減少します。そして日本の電気のうち、家庭で使用されるのは30%、残りの70%は企業で使用されています。さらに、テレワークの導入にはペーパーレス化が必要であるため、木材の伐採量を軽減することにもつながります。

このようにSDGsを意識したうえでテレワークを推進する意義を見直してみると、テレワークはコロナ禍における単なる「感染対策」ではなく、長期的に発展可能なビジネスを実現するためにも欠かせないものであることがわかります。また、国際的な取り組みであるSDGsを推進することは、企業の社会的評価に直結します。テレワークを導入することで、投資家や労働者、さらには消費者からも選ばれる企業として高い評価を得ることができるのです。

企業のテレワークの現状

ただ、日本生産性本部（東京・千代田）から公表された「第8回働く人の意識調査」（2022年）によると、企業のテレワーク実施率は18.5％だという結果が明らかになりました。やはり多くの企業がテレワークを「感染対策」としかとらえていなかったり、そもそもテレワークで対応できない業務が多かったりといった現状が読み取れます。

また、テレワークで対応できない業務があることや、従業員のITリテラシーがさまざまであることもテレワーク導入に踏み切れない理由でしょう。さらに、テレワークの際にセキュリティをどのように担保するかについても考える必要があります。

多方面からテレワーク導入が求められている今、企業は対応を迫られているのです。

SDGsの観点から考える、正しいテレワークの導入方法

SDGsを意識したテレワークを実現するには、体制をフルリモートに近づけていく必要があります。そしてそのためには、企業全体のデジタル化や働き方改革が必要です。具体的にはペーパーレス化、チャットツールなどを活用したコミュニケーションの確保、RPAの導入による業務の自動化、テレワークする社員への支援制度の整備、フレックスタイム制の導入などが挙げられます。

重要なのは、「感染対策」として短期的にテレワークを導入するのではなく、SDGsを意識しながら継続的にテレワークを続けるためのシステムの構築や、業務のルーティンの明確化などを行うことです。自社に最適なプランを事前に検討しておくことが求められるでしょう。

システム開発が進んでいる今、テレワークで対応可能な業務は増加してきています。SDGsを意識したうえで、あらためてテレワークが自社にもたらす影響を精査し、働き方を見直してみるのはいかがでしょうか。

まとめ

・SDGsが掲げる17の目標のうち、5つがテレワークの導入によって推進される
・テレワークは単なる「感染対策」ではなく、企業の継続的な発展につながるものである
・テレワーク導入の際は、自社にあった最適なプランを検討しておくことが重要