UPSの役割は、停電が起きたときに機器の電源を安全に切ってデータやHDDの損失を防ぐことのほかに、落雷などの電源異常が起きたときにサージから守ること、停電時でも一定時間作業を行うことがあります。このうち、サージ対策機能と一定時間の作業を行うことについて、ほかの対策と比較してみましょう。

雷サージ対策が必要な理由

「サージ」というのは、電子機器などを損傷する電圧の急激な上昇を指します。雷で発生した電流が建物内に伝わる「誘導雷」から、過電流・過電圧を起こしてPCやサーバー等の機器の電源部分や内部回路を損傷させてしまう可能性があります。これは避雷針のある建物内であっても起こり得ます。

雷による過電流・過電圧を防ぐ目的だけであれば、簡単な方法は「雷ガード」付きの電源タップを導入することです。

簡単な雷サージ対策は雷ガード付きの電源タップ

一般的な雷ガードには、雷サージ吸収素子（バリスタ）が用いられ、雷サージで発生した過電流を吸収し、電源タップに接続している機器に流さないようにします。

高性能な雷ガード付き電源タップは、雷サージ吸収素子にくわえて、アース端子が付き、雷サージを素子で吸収しながら、アースへも逃がす回路が搭載されています。

ただし、近くで落雷があった場合など、雷ガード付きの電源タップだけの対策では守り切れないこともあります。また、雷サージ吸収素子の効果は1回きりのため、長期的な目で見ると万全な対策とは言えないでしょう。

UPSが雷サージ対策になる理由

UPSは雷サージ対策にも有効とされています。それは雷ガード付き電源タップ同様に雷サージ吸収素子が内蔵されているからです。

停電などの電源トラブルが起きたときには、内蔵のバッテリーから電源を供給し、安全に機器をシャットダウンできる時間を稼げるのですから、雷ガード付き電源タップ＋UPSの主機能を併せもっているという見方もできるのです。

価格も小型なUPSなら、雷ガード付き電源タップとあまり変わりません。

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BCP対策としての電源確保

地震、線状降水帯の発生による豪雨、台風とあらゆる災害が起きて、その都度停電が起きています。自然災害がなくとも予期しない停電が起こる理由はほかにもあります。たとえば、工場やビルなどの電気設備トラブルから起こる漏電、感電など。実際に漏電に至ることは少ないのですが、設備トラブルが続くと、変電所が自動でトラブルを感知して事前に電気を止める仕組みになっているため、停電は起きてしまいます。

PCやサーバーを使用する業務は、停電で業務を続行できません。停電はいつ起こるかわかりませんから常時、その対策をする必要があります。

停電対策にはポータブル電源も

ポータブルと言っても、スマートフォン充電用の小型バッテリーではなく、ACコンセントやDC端子を備える大型バッテリーを指します。これを常時、オフィスに停電時でも業務を止めずに済みます。

3万円前後のポータブル電源で300Whくらいです。ポータブル電源の稼働時間は、ポータブル電源のバッテリー容量（Wh）×80％÷使用する機器の消費電力の合計（W）ですので、例えば300Whのポータブル電源で、消費電力40WのノートPC2台を3時間使える計算になります。ノートPC＋ネットワーク機器で消費電力が100Wだとすれば2.4時間程度です。

瞬停にはUPSがおすすめ

完全に電気が止まってしまう停電は近年起こりにくくなっていますが、ごく短い時間電圧が下がって電気の供給が途切れる「瞬停」は気づかないだけで意外と頻繁に起きています。

瞬停の原因の7～8割は落雷の影響によるものです。主に送電線への落雷が多いのですが、そのほか、台風や暴風、地震、土砂崩れなどで電線が切れ、瞬停が起きてしまいます。鳥の営巣、電柱への車両衝突、電柱近くでの火災、豪雪地帯では電線の上の積雪なども原因となることがあります。

発電所で作られた電気は常に2回線で送電され、もし1回線に問題が起きても完全に止まることはありません。ただし、故障個所で起きた電圧低下の影響は、もう1回線にも及ぶことがあるのです。雷が落ちた瞬間などに自動回復できる機能も付いていますが、回復しない場合、数十ms～2s程度の瞬停が起きてしまいます。

この瞬停であっても、作業中のPCのデータが消えてしまう、またはハードディスクがクラッシュするなどのリスクが無いとはいえません。

短い時間のことですから、ポータブル電源につなぎなおす間には収まっていることになります。また、急に電源が落ちた状態になるため、手動で接続するポータブル電源では瞬停の対策にはつながりません。

3万円台のUPSだと、100W（ノートPC＋ネットワーク機器など）で58分の使用が可能なものもあります。同じ価格帯のポータブル電源と単純に比較すると、使用可能な時間は短くなりますが、瞬停にも対応できること、雷サージ対策にもなること、主目的である接続機器を安全にシャットダウンできることを考えると、UPSは最もコストパフォーマンスが高いと言えます。

最近のポータブル電源の中には「停電時にバッテリーへの切り替え時間は20ms以内と簡易ＵＰＳ機能搭載」を訴求するものがあります。しかし、UPSと呼ばれるものは「停電時にバッテリーへの切り替え時間は10ms以内」とIEC規格で規定されているため、正確にはポータブル電源にUPS機能は備わっていません。
こうした表記にも注意しながら、いざという時のために最適な対策をこころがけましょう。

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まとめ

・雷の電流が建物内に伝わる「誘導雷」で

・落雷時、気づかないくらい短い時間の停電「瞬停」が起こることがある

・雷サージも停電・瞬電対策にもUPSは有効