9月、10月は「DX推進指標　秋の集中実施期間」です。経済産業省は、各社がDX推進状況を把握し、次期経営計画へ反映することを促しています。この期間に、自社のDX推進の進捗状況をチェックしておきましょう。

DX推進指標とは

2019年7月に経済産業省が2019年7月に「DX推進指標とそのガイダンス」を発表しました。2つの指標と35項目の定性指標から成るDX推進指標は、日本企業が抱える問題やその解決方法として押さえておきたいポイントがまとめられています。

2つの指標は、経営面とITシステムに分かれています。
・DX推進のための経営のあり方、仕組みに関する指標
・DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築に関する指標

DXというと、アナログ作業をITに置き換えておくことに注目しがちですが、目的はIT機器やアプリケーションの数を増やすことではなく、事業を変容させていくことです。そのため経営のあり方や仕組みを見直すことも大切になります。

毎年9月10月はDX推進指標診断の集中実施期間です。
10月31日までにDX推進指標に基づいた自己診断を行い、その結果をIPA（情報処理推進機構）に送ると、全体のデータと自社の結果を比較したベンチマークが提供されます。
それに間に合わなくても、結果はIPAによって公表されますので、この機会に、指標に沿ったDX推進ができているかを確認することをおすすめします。

DXで大切なこと

DX推進指標に沿って、DXを進めるうえで確認しておくべきことを見ていきましょう。

DXの推進というと、ITツールを導入したり、AIを取り入れたりすることで何かできることはないか、という考え方になりがちです。ですが、DXで目指すべきことは顧客視点で新しいビジネスを創出していくことです。

トップダウンでDX推進の号令がかかっても全従業員に浸透せずなかなか進まないということはないでしょうか。
役員、事業部門、DX部門、IT部門などあらゆる関係者がDXで実現するべきことを共有し、それに対する自社の現状や課題、克服すべきアクションなどをともに考えていくことが大切です。

DX推進のための経営のあり方、仕組み

新しいビジネスを創出するために、顧客にとってどのような価値を生み出すのかという視点でのビジョンを明確にし、社内外で共有するところから始めます。このとき、10年後にも自社の価値を明確化できるか、というところまで見通しておく必要があります。

経営ビジョンが定まったら、実現するための障壁を取り除いていきます。従来の社内のビジネスモデルのままでは進まないことがあれば、そういった課題を解決していきます。中には、社内に抵抗感を抱く従業員がいるかもしれません。その場合は、なぜ変革が必要なのか、会社が何を目指しているのかを具体的に説明し、納得してもらわなければなりません。

経営トップは、DX推進に向けて組織整備や人材・予算配分、人事評価の見直しなどを行い、実践していきます。必要に応じて、DX人材の確保、人材の育成にも努める必要も出てくるでしょう。特にデジタル技術やデータ活用に長じた人材が大切なのは言うまでもありませんが、改革していく業務に精通したスタッフも大切です。

推進していく途中ではつまずくこと、失敗することも生じる可能性があります。現場にかかわる従業員は、そんなときにも失敗から学び、前に進むマインドセットを身につける必要があります。

IT システム構築の枠組み

ビジョンを実現するために、既存システムに足りないところなどを見直し、対策を講じます。DX推進のためにITシステムに求められるものは、主に次の3点に絞られます。

データをいつでも使いたい形で使えること
変化に迅速に対応できること
部門を超えて全社最適なデータ活用ができること

業務部門ごとにシステムをカスタマイズすると、ITシステムがブラックボックス化し、無駄な投資となってしまいますので注意が必要です。

DX推進のためにITへの投資も必要です。短期的な視点でシステムを開発してしまうと、長期的には保守費や運用費が高騰する「技術的負債」が生じてしまうことがあります。長期的に見て必要なITシステムを導入していかなければなりませんし、他の業務等にかかるコストを削減してIT投資に回す必要があるかもしれません。

「『DX 推進指標』とそのガイダンス」に記載されている成熟度レベルはレベル0（未着手）からレベル5（グローバル市場におけるIT企業）の6段階に設定されています。2022年の同調査の結果は、平均で、経営視点指標が1.51（目標値は3.16）、IT指標が1.71（目標値は3.26と、全体として目標未遂です。

多くの企業がこれからまだDX推進を行っている状態ですが、指標を参考に無駄なく効率的に進めていきたいものです。

DX推進指標による自己診断書を提出する場合は、こちらから行ってください。
https://www.ipa.go.jp/digital/dx-suishin/about.html

まとめ

9月10月はDX推進指標秋の集中実施期間
DXは、顧客視点で新しいビジネスを創出していくための業務変容
全社でDXの目的を共有することが大切