サイバー攻撃が年々巧妙化、高度化しています。ファイアウォールなどで侵入を防ぐことはもはや難しく、侵入することは当然と見なしての対策がとられるようになってきました。もちろん、侵入を防ぐ対策も大切ですが、それと併せて、侵入した脅威を対処する方法もとったほうが安全です。その一つとしてXDRが考えられます。

増えているサイバー攻撃

ランサムウエアの被害をニュースで見聞きすることが増えました。自動車関連企業では生産・販売等の停止をせざるを得なくなり、病院では電子カルテシステムに侵入され、外来・救急・手術などの医療業務がストップしてしまいました。

身代金額を少額にした中小企業向けの攻撃も増加傾向にあります。

警察庁のデータによると、2022年中に警察庁に届け出があったランサムウエアの被害は230件。これは前年より57.7％の増加で、2020年後半から右肩上がりで増えています。

かつてのランサムウエアは、拡散型メールや悪意のあるWebサイトに記載されたURLを開いてしまうことで感染するものが多かったのですが、最近は攻撃者が直接組織内のネットワークに侵入し、ネットワーク内で攻撃を拡大させる手口も増えています。

VPNの脆弱性をついたものや、リモートデスクトップからの侵入など、テレワークでの推進を妨げるようなものも多く見られます。

XDRはEDRの拡張版

EDR（Endpoint Detection and Response）はエンドポイント（PCやサーバー、スマホなどのデバイス）を監視し、不審な挙動を検知し、対処するソリューションです。

アンチウイルスソフトなどのEPP（Endpoint Protection Platform）は、マルウェアがデバイスの侵入を防ぐことを目的としているのに対して、EDRはデバイスに侵入してしまったマルウェアを検知し、対処するものです。

似たようなものにNDR（Network Traffic Analysis）があります。これはネットワーク上で、マルウェアを検知し、対処します。

XDRは、対象をエンドポイントやネットワークに限定せず、ネットワークやサーバー、メール、クラウドなど複数のレイヤーからデータを収集し、集中管理して分析します。EDRだけ、あるいはNDRだけでは見逃してしまうような脅威も可視化でき、防御、検知、対処を行えます。

XDRの主な機能

機能は製品によって違いますが、大体以下のとおりです。

サイバー攻撃を可視化
エンドポイント、ネットワーク、クラウド、メール、サーバーなど社内ネットワーク上にある全てのレイヤーでサイバー攻撃を可視化します。

自動的に相関分析
各レイヤーのセンサーからデータを収集して、自動で相関分析を行います。相関分析とは、複数の要素がどの程度同じような動きをするのか、どのような関係があるのかを分析する手法です。相関係数の絶対値が大きくなると要素間の関係性は強いと見なされます。

XDRにおいては、収集したデータに異常があるかどうかをこの相関関係で分析します。EDRなど対象が絞られていると見つからない異常も、発見できる可能性が上がります。

分析に機械学習やAI分析を用いているソリューションもあり、サイバー攻撃の検出がより高度に行えます。

インシデント対応
サイバー攻撃が検出されたときは、自動的に対応すべきインシデントに優先順位をつけて、対処します。

不審な振る舞いを見つけてから、対処まで迅速に行えます。

新しい脅威も対処
過去のインシデントや、全従業員のデバイスなどをAIが学習して、いつもと異なる振る舞いがあったときには、素早く検知します。

XDR導入のメリット

攻撃を受けたのがエンドポイントだけであれば、EDRだけで問題は解決することもあります。けれども、例えば一部古いシステムが残っていて社内のエンドポイント全てにEDRが導入できないようなケースもあります。EDRがないデバイスが攻撃を受けると、そこから社内に広がってしまうことも考えられます。

XDRであれば、エンドポイント以外からもデータを収集するので、より複雑な攻撃を検出できるようになるのです。

また、エンドポイントやネットワーク、クラウドなどそれぞれに異なる対策を行っている場合、インシデントが起きた場合にアラートが追い切れなくなる恐れがあります。また、複数箇所からアラートがきた場合、その関連性が判断できず、対処が遅れる可能性もあります。

XDRであれば一括管理できるので、不審な動作がどこで起きたのかがつかみやすく、セキュリティ担当者の負荷を減らすことにもつなげられます。

まとめ

・サイバー攻撃の巧妙化で、アンチウイルスソフトやファイアウォールでは足りなくなっている
・XDRはEDRの拡張版で、複数のレイヤーを包括的に防御
・XDRを導入することで、スタッフの負担を減らせることも