2023年秋に警察庁は新型のサイバー攻撃「ノーウェアランサム」についての注意勧告を行いました。サイバー犯罪集団は、従来のランサムウェアからノーウェアランサムに手口を変えつつある可能性があるといいます。ノーウェアランサムはランサムウェアと何が違うのか確認しておきましょう。

後を絶たない身代金（ransom）被害

IPA（情報処理推進機構）が発表した「情報セキュリティ10大脅威 2024」の組織片で1位に選ばれたのは「ランサムウェアによる被害」。9年連続9回目の1位でした。

警察庁の「令和５年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」では、ランサムウェアの被害が高水準で推移すると同時に、ノーウェアランサムの被害が新たに6件発生したことを報告しています。

ノーウェアランサムとは

「ノーウェアランサム」という言葉は警察庁が独自に作り出した言葉です。従来のランサムウェアを用いないという意味で、英語表記するなら「No-ware ransom」になります。海外では数年前から目立ち始めていたのですが、国内で被害が確認されたのは2023年が初めてのことでした。

ランサムウェアの侵入手口は、脆弱性を突いて企業ネットワークに侵入し、管理者権限を奪取。保存されたデータを次々と暗号化していきます。それと同時に、暗号化したデータを復号化するための身代金として金銭を要求するのです。

一方、ノーウェアランサムはデータを暗号化させることなく、情報だけを盗んで企業等団体を恐喝します。

ノーウェアランサムは、データを暗号化することがないため、管理者権限を奪取する必要もなく、犯人にとっては犯行が容易になると言われています。ネットワークにつながったPCやサーバーにアクセスし、ファイルを開いたり、メールやチャットの文面を盗み見たりすることで情報を窃取します。

データが暗号化されて見られなくなるようなことはないのですが、犯人グループは入手したデータを公開するぞ、という脅しをかけてくるのです。脅迫されることがなかったとしても、重要なデータが盗まれることは企業にとって大きな損害につながりかねません。

ノーウェアランサムが増え始めた背景として、従来のランサムウェアでは身代金が取れなくなってきているということがあります。ランサムウェアの被害が多くなったことで、各国でランサムウェアの犯行者に対する身代金の支払いが規制対象とされたからです。また、有名な犯行グループが検挙されたことも、理由の一つのようです。

このように従来型のランサムウェアでは犯人にとっての成果があがりにくくなっているため、徐々にノーウェアランサムの手口が増えるのではないかとみられています。

ランサムウェアは感染したときにランサムノート（脅迫画面）が表示され、被害をそこで食い止めることができる場合もあるのですが、ノーウェアランサムは痕跡を残さずに情報を盗んでいきます。

ノーウェアランサムを防ぐには

対策としては、従来のランサムウェアやほかのサイバー攻撃と大きく変わることはありません。

ランサムウェアは、VPNやリモートデスクトップなどの脆弱性から侵入するか、または電子メールの添付ファイルやURLを開かせることで感染させます。その後、企業内ネットワークにつながっているデバイスに拡散していきます。

ですから、まずは入口部分でのセキュリティ対策を行いましょう。さらに、万が一侵入されても広がらないようにウイルス対策ソフトなどの導入、認証方法を考える、攻撃の痕跡を検知、可視化するシステムを導入するなど、さまざまな階層での対策をおすすめします。

上で述べたように、ノーウェアランサムは、ランサムウェアよりも被害にあったことに気づきにくいという性質を持っていますから、早期に不正侵入を発見できるような技術をとりいれることが大切です。従業員には、ノーウェアランサムの情報を周知し、このような手口でのサイバー攻撃があり得ることを従業員全員で共有しておくといいでしょう。

社内ネットワークに侵入されてしまった場合でも、情報を盗まれないように機密度の高い情報はスタンドアロンの端末に保管するほうが安全です。

それでも被害にあってしまったときは、最寄りの警察署または各都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口に通報しましょう。警察では通報を受けたら、全国の警察で保有している高度な知見をもとに、被害拡大対策に必要な情報を提供し、助言してくれます。捜査を受けることで企業の業務への影響がでないように、できるだけ配慮してくれますので、自社以外に被害を広げないためにも自社内で解決しようとしないことです。

そして再発を防止するために、社内ネットワークにつながる端末をすべてチェックします。侵入の原因となった箇所は特に、セキュリティ対策を見直して、同じようなことが起こらないようにしておくことが大切です。

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まとめ

・ノーウェアランサムを含むランサムウェア攻撃が続いている

・ノーウェアランサムは痕跡を残さずにデータを窃取し、身代金を要求する

・対策方法はランサムウェアと同様。被害にあったときはすぐに届出る