昨今、「ゼロトラスト」への関心がますます強まっています。ゼロトラストは従来の対策では対処できないリスクに備えられる、新しいセキュリティの考え方です。本記事ではゼロトラストの概要や今求められている理由などについて解説します。

ゼロトラストという考え方

ゼロトラストとは、「すべてのアクセスを信頼しないこと」を前提に対策を行うセキュリティの考え方です。従来の「社内ネットワークと外部（インターネット）の境界で脅威を防ぐ」というモデル（境界型セキュリティ）における「社内ネットワーク内にある人・デバイスは信頼する」という考え方を捨て去った概念です。

ゼロトラストにはガイドライン「NIST SP800-207」が公表する7つの基本原則があります。同原則には例えば「すべてのデータソースとコンピューティングサービスをリソースとみなす」「すべてのリソースの認証と認可を⾏い、アクセスが許可される前に厳格に実施する」などが挙げられ、ゼロトラストの基本的な考え方が構築されています。

なぜ今、ゼロトラストが必要なのか

近年は、新型コロナウィルス感染症拡大によるテレワークの普及やクラウドサービスの浸透などに伴い、社内ネットワークと外部の「境界」があいまいになっています。そのため従来の「社内ネットワークと外部の境界で防御する」という対策が現実とそぐわなくなってきました。

また昨今企業には、外部からの脅威だけでなく、内部不正への対応も強く求められています。例えば、独立行政法人情報処理推進機構（以下、IPA）が発表している「情報セキュリティ10大脅威 2023」には「内部不正による情報漏えい」が4位（前年5位）にランクインしています。実際に「大手回転寿司チェーン企業のトップが、競合他社の内部データを不正に取得した」という事件もありました。

こうした社会情勢の変化および内部の脅威に対して有効に働くゼロトラストの考え方は、昨今ますます必要性を増しているのです。

ゼロトラストの3つのメリット

続いて、ゼロトラスト導入による3つのメリットを見ていきましょう。

セキュリティの強化

すべてのアクセスを信頼しないことを前提とするゼロトラストでは、従業員に与えられる権限は必要最小限です。同様に、不正侵入した攻撃者もアクセスできる範囲は限定されます。そのため、社内外のユーザーによる、情報漏えいを含む被害を最小限に抑えることができます。

加えて、ゼロトラストでは常時ログを収集しています。そのため、インシデント発生時の原因特定および対策もスピーディに実行でき、被害の広がりを限定することができます。

情シス・セキュリティ担当者の負担軽減

従来のセキュリティ対策では、外部からの多様な脅威に対し、リスクごとにシステムを導入・構築して対処してきました。そのため、情シス・セキュリティ担当者は対策をすればするだけ、運用工数が増えて負担が重くなっていました。

一方、ゼロトラストを導入する多くの場合、クラウドサービスを利用することになります。つまり、ゼロトラストでは各セキュリティをクラウド上で一元化管理できるようになるのです。多くのシステムを必要としない＝管理工数が少なくなるゼロトラストは、情シス・セキュリティ担当者の負担軽減に寄与するでしょう。

場所を問わない多様な働き方の実現

ゼロトラストでは、許可された端末で、どこからでも社内システムへ安全にアクセスできるようになります。そのため、安全性の高いセキュリティ環境のもと、従業員には社内外どこでも柔軟な働き方をしてもらうことが可能です。その結果、従業員満足度やモチベーション向上といった効果も期待できるでしょう。

ゼロトラストを実現するソリューション

最後に、IPAがまとめる「ゼロトラスト移行のすゝめ」を参考に、ゼロトラストを実現するソリューションを解説します。

IDaaS（ID as a Service）

「IDaaS」とは、システム・アプリへのログイン時に必要な複数のIDを一元管理するソリューションです。

何も信頼しないゼロトラストでは、誰がデータリソースにアクセスしようとしているか、常時適格に識別・認証・許可をしなければなりません。そのため、ID管理はゼロトラストにおいて非常に重要な要素です。

IDaaSを利用することで、ID管理業務の負荷低減およびID削除漏れを含む適切なID管理を実現できます。

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DLP （Data Loss Prevention）

「DLP」は機密情報の漏えい・消失を防ぐためのソリューションです。

ゼロトラストでは「内部不正者や攻撃者による不正な社内データの持ち出しを防ぐ」「不正に持ち出されたとしてもデータにアクセスさせない」という視点でセキュリティ対策を講じる必要があります。

DLPを導入することで、機密情報の取り扱いを制限することができます。

SIEM（Security Information and Event Management）

ゼロトラストの7つの基本原則の1つに「資産、ネットワークのインフラストラクチャ、通信の現状について可能な限り多くの情報を収集し、セキュリティ体制の改善に利⽤する」があります。この原則は「ログの収集および分析」を行い、より強固なセキュリティ対策を講じることで、実現可能です。

「SIEM」を活用することで、機器のログの集約・分析が可能になります。SIEMではログの可視化もできるため、例えば攻撃のパターンを把握することも可能です。

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まとめ

・ゼロトラストとは、「すべてのアクセスを信頼しないこと」を前提に対策を講じるセキュリティの考え方
・社内ネットワークと外部の「境界」があいまいになった近年、ゼロトラストの必要性は増している
・ゼロトラストを実現するソリューションに「IDaaS」や「SIEM」などがある